嵐、「A-RA-SHI:Reborn」の革新的アプローチ 根底に感じるアイドルとしての確かな誇り

 今年、嵐は様々な新しい試みに精力的に挑んできた。これまでにはなかったインターネットを中心とした発信が多かったが、そのすべてのベースには“音楽”がある。また、その活動のすべては、過去作・新作含めすべての楽曲をより幅広い層にリーチさせることを第一に据えていた。

 一見、ジャニーズアイドルとしては革新的なアプローチに思えるが、その根底にあるのはアイドルとしての確かな誇りだろう。

 アイドルがメインステージとする活動は決して音楽だけではない。演技の世界で高い評価を受けている二宮和也や松本潤、バラエティ番組や報道番組で注目を集めることが多い櫻井や相葉雅紀、そのタレント離れした芸術的センスを遺憾なく発揮している大野智と、嵐のメンバーだけを見ても音楽以外の点から高く評価されている。グループにとって記念碑的な活動や作品なら、音楽以外のアプローチでも充分可能だったはずだ。しかし、彼らは音楽を選んだ。

 ジャニーズは長年、オーディエンスと直接向き合うショー形式での表現を重視することを伝統としてきた。その基盤には常に音楽があり、歌やダンスでメッセージを伝え続けることにこだわりを持ち続けている。嵐が今年の活動の中で見せてきた姿勢は、同じジャニーズの後輩や仲間たちへ新たな表現の道を作りながらも、ジャニーズの伝統やアイドルの誇りを守り続ける、覚悟に満ちたものなのではないだろうか。

 嵐は、ジャニーズがこれまで貫いてきた伝統を大切に思うからこそ、既成概念を破壊しながらも新たな音楽の可能性を広げていく方法を選んだのだろう。デビュー当時からラップ・ヒップホップ文化をアイドル楽曲に取り入れるといったパイオニア的アプローチを貫き続けてきた、彼ららしいスタイルだ。

 今回のリリースは“Reborn”企画の第一弾。今後も過去楽曲を“Reborn”させたものが順次リリースされることが予想できる。次はどの楽曲が選ばれるのか、そしてどのような姿に生まれ変わるのか、さらなる期待が尽きない。嵐の“dream”はこれからも、私たちの耳を楽しませ続けてくれるに違いない。

■五十嵐文章(いがらし ふみあき)
音楽ライター。主に邦楽ロックについて関心が強く、「rockinon. com」「UtaTen」などの音楽情報メディアにレビュー/ライブレポート/コラムなどを掲載。noteにて個人の趣味全開のエッセイなども執筆中。ジャニーズでは嵐が好き。
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