『SONGS』出演の秋山黄色、数々のライブを経て開花したソングライターの本質 1stワンマン成功に至るまでの足跡を辿る

 2019年、秋山黄色の躍進には目を見張るものがあった。秋山黄色とは、“1996年3月11日生まれ。栃木県宇都宮市出身、専門学校中退のフリーター”(※オフィシャルサイトより)。そう、ちょっと前まで、まだ何者でもなかった23歳の青年だ。

 中学からベースを始め、高校1年にはオリジナル楽曲の制作を開始。同世代の友人たちが次々と就職していくかたわら、なかば引きこもり状態だったという彼の唯一の楽しみは、手探りではじめたDTMでの楽曲制作だった。明日の見えない自宅の宅録部屋で生まれたやさぐれた初期衝動は、次第にインターネットを通じた仲間内への共有を目的とした楽曲へと形を変えていく。インターネットへ投稿しはじめた当時、楽曲はすでに50曲以上あったというのだから驚かされる。今でこそマルチアーティストと呼ばれる秋山黄色だが、作詞・作曲・編曲・歌唱のほか、映像・イラスト制作も手掛ける稀有な才能は環境が生み出した一面があるのかもしれない。

 退屈しのぎにはじめたSoundCloudやYouTubeへの投稿、SNSでの拡散を経て、秋山黄色の人生は急展開を迎える。2018年6月に自主レーベル<BUG TYPE RECORDS>より「やさぐれカイドー」を配信リリース。なお歌詞冒頭の威勢良い〈呆然、夜中の2時過ぎてやっと俺だ〉とは、バイト明けに仲間の溜まり場の居酒屋へ繰り出し安酒を食らっていたことを意味しているそうだ。

 人付き合いが下手で投げやりな態度を隠さない痛快なナンバーである同曲は、アンテナを張った早耳リスナーの評価を得て各種プレイリストにリストイン。Spotifyバイラルチャート(日本)では2位にランクインするなど注目を集めた。8月に、あらためてYouTubeに投稿したMVは、2019年12月6日現在200万再生を突破している。夏にはコンテストをくぐり抜け『出れんの!?サマソニ!?』枠で『SUMMER SONIC 2018』へも出演。とはいえ、当時のライブはまだまだ集客は多くはなく、独特なるギターフレーズ、心に響く歌声など才能の一面は伺えながらも、ライブ慣れしていなかったことを覚えている。

秋山黄色『 やさぐれカイドー』

 ターニングポイントとなったのは2019年1月、それまで配信していた楽曲を集めてリリースしたミニアルバム『Hello my shoes』の存在だ。秋山黄色の魅力といえば、誰もが心に忍ばせる虚無感や焦燥感を切り裂く、硬質かつエモーショナルなオルタナティブロックだ。明日の孤独を打ち破るヒリついた言葉が、ライブ経験を積み重ねた鮮烈な歌声によってポジティブに胸に突き刺さった。その後、『What color are you?』と命名した自主企画を開催し、数々のサーキットフェスやイベントへも出演。さらに音楽雑誌『MUSICA』、『ROCKIN'ON JAPAN』にもフックアップされ、ロック好きリスナーへと広まっていく。

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