QUEEN『オペラ座の夜』と野田秀樹の作家性の融合 話題作『「Q」:A Night At The Kabuki』を観て

『『Q』:A Night At The Kabuki』を観て

20191014-q-sub2
191128_q_3
191128_q_5
previous arrow
next arrow
20191014-q-sub2
191128_q_3
191128_q_5
previous arrow
next arrow

 劇中でほとんど主題歌のように使われたのは「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」だ。フレディ・マーキュリーの書いたもっとも美しいラブソングを、ロミオとジュリエットの悲恋に重ね、何度も流して盛り上げる。興味深かったのはオリジナルのスタジオバージョンだけでなく、ライブバージョン(1979年録音。2011年リマスターバージョンのボーナスディスクに収録。オリジナルはライブアルバム『ライヴ・キラーズ』収録)も場面に応じて使われていたことだ。フレディの歌声と共に歌われる満員の観客の大合唱は「民衆の声」のようでもあり、劇を感動的に盛り上げていたし、肌が粟立つような感覚もあった。このように同じ楽曲でもバージョンやカットアップの仕方、流れる場面に応じてニュアンスやフィーリングが異なるケースもあるわけで、そのへんのさじ加減は、演出の腕の見せ所だろう。

 ステージセットはシンプルだが場面転換や時間経過の演出はさすがに鮮やか(シーツを使った初夜の場面の演出には唸った)。とにかくセリフの数が多く、喋るスピードが速く、動きも激しい。言葉遊びも頻繁に使われ、情報量が多いので、そこに込められたさまざまな暗喩やオマージュは、とても一度観劇したぐらいでは消化しきれそうもない。とはいえ野田作品としては異例なほどわかりやすく理解しやすい作品という評価は、おそらくQUEENという筋が一本通っているからだろう。QUEENのメンバーはこの舞台をまだ見ていないようだが、将来は英語劇に翻案し海外で上演する可能性だってあるはずだ。

 役者の演技について触れることができなかったが、これが初めての舞台劇出演だったという広瀬すずの可憐な存在感と躍動する肉体の輝き、二役を見事にこなした竹中直人の怪演が印象的だった。

(撮影=大和田茉椰)

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

■公演情報
NODA・MAP第23回公演『「Q」:A Night At The Kabuki』
・東京公演
10月8日(火)~10月15日(火)東京芸術劇場プレイハウス
11月9日(土)~12月11日(水)東京芸術劇場プレイハウス

・大阪公演
10月19日(土)~10月27日(日)新歌舞伎座

・北九州公演
10月31日(木)~11月4日(月・祝)北九州芸術劇場 大ホール

作・演出 :野田秀樹
音楽 :QUEEN
出演 :松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳、橋本さとし、小松和重、伊勢佳世、羽野晶紀、竹中直人、野田秀樹

NODA・MAP第23回公演『Q』当日券販売について

公式サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる