クリープハイプ、現体制10周年を機に再構築した「バンド二〇一九」 これまでの歩みを追体験できるような1曲に
MVでは最後、誰もいない斎場の祭壇の前に置かれた棺の中から尾崎がおもむろに起き上がり、何事もなかったかのように立ち去るシーンが印象的に描かれている。2001年のバンドの始動から8年の間にメンバーが入れ替わり、尾崎のみになってしまった時期もあったクリープハイプ。それから10年の間、現体制での活動の中でさまざまなものを手に入れ、逆に失うことも少なくなかっただろう。現体制10周年を迎えるタイミングでの「バンド」のリアレンジ、そしてこのMVには、今のクリープハイプに辿り着くまでの尾崎を弔い、生まれ変わった姿で“バンド”という名の人生を歩み続ける決意が込められているように見えた。
高いソングライティングスキルと唯一無二の歌声を持つ尾崎であれば、ソロ活動という道もあったはずだ。それでもなおバンドという形を選んだのは、尾崎の“バンド”への執念と、それを支える小川・長谷川・小泉の存在があったからだろう。〈ギターもベースもドラムも全部 うるさいから消してくれないか〉〈こんな事を言える幸せ 消せるということはあるということ/そしてまた鳴るということ いつでもすぐにバンドになる〉というフレーズには、そんな尾崎の“バンド”への強い想いとメンバー3人への感謝が感じられる。
本日16日には現体制10周年を記念した特番『クリープハイプ うらビデオ放送』(BSフジ)の放送も決定。さらに、山口つばさの漫画『ブルーピリオド』とのコラボレーションによる人気曲「栞」のミュージックビデオの公開など、クリープハイプの楽曲の存在は様々な場所へと波及を続けている。「バンド二〇一九」をはじめとする楽曲を通して4人の信念に触れる度に、これからもクリープハイプという“バンド”は続いていくに違いないと期待してやまない。
■五十嵐文章(いがらし ふみあき)
音楽ライター。主に邦楽ロックについて関心が強く、「rockinon. com」「UtaTen」などの音楽情報メディアにレビュー/ライブレポート/コラムなどを掲載。noteにて個人の趣味全開のエッセイなども執筆中。ジャニーズでは嵐が好き。
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