香取慎吾、ソロアーティストとしてどんな表現を目指す? 先行配信曲「Trap」などの方向性から探る

 歌詞の内容についても記しておきたい。「Trap」の中心にあるのは、“君はここにいていい、自由に楽しんでほしい”というメッセージだ。洗練されたトラック、シックな手触りのメロディとともに体を揺らし、余計なことを考えず、感じたままに時を過ごしてほしいーーこの曲で歌われていることは、彼自身の率直な願望なのだろう。そのことを象徴しているのが、〈悲しい何かを見るより 楽しい何かを Looking for〉というフレーズ。これは単なる逃避ではなく、さまざまな出来事を経験し、現実の壁を乗り越えながら、(ようやく!)音楽を心から楽しめる環境を作ることができた喜びの発露であり、“この状況をリスナーと共有したい”という願いなのだと思う。「Trap」を聴いたすべてのファンは、“この曲を早くフロアで体感したい”という欲望を抑えられないだろう。

 「10%」「Trap」に続き、2020年1月1日に1stアルバム『20200101』(ニワニワワイワイ)をリリースすることを発表している香取慎吾。“東京オリンピック・パラリンピックの開催年である2020年を最速で盛り上げるため「皆でワイワイ楽しもう!」をテーマに制作された”という本作には、フィーチャリングアーティストとしてBiSH、氣志團、KREVA、SALU、スチャダラパー、SONPUB/向井太一、TeddyLoid/たなか、WONK、yahyelなどが参加し、もちろん香取本人も楽曲制作に関わっている(HIPHOP/R&Bを中心に、エレクトロからロック、アイドルまでを網羅した参加アーティストの名前だけでも期待値が大きく上がってしまう)。多彩なクリエイターたちとのコラボレーションによる楽曲はもちろん、MVや初のフィジカルCDのアートワーク、そして、アルバムの楽曲がどのようにパフォーマンスされるかも大いに気になるところ。ポップに振り切った「10%」、コアな音楽性を提示した「Trap」、そして、そのアーティスト性の全貌が明らかになるアルバム『20200101』。ソロアーティスト・香取慎吾のキャリアの始まりをしっかりと注視していきたい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

関連記事