Juice=Juice「ひとそれ」が多くの人の心に響いた理由 山崎あおいの歌詞の魅力から紐解く

 山崎の歌詞の魅力として著者が感じているのは、弱さとたくましさが同居する自立した女の子の目線だと思う。たとえば〈本当は寂しがりやなとこ/少しだけバラしてしまいたい/だけど私自身を 幸せにできるのは/結局は私だけ 勇敢にならなくちゃ〉(「ひとそれ」より)という歌詞。弱さと強さがせめぎ合う自分自身を内省的に見つめながらも、すこしのプライドと勇気は捨て去らなくてよいことを、ポップなメロディに乗せて伝えてくれる。現役大学生のみで構成されたグループ、カレッジ・コスモスに提供した楽曲「幸せのありかはどちらですか」でも、〈私らしくあるために 何を選ぼう〉〈少し背伸びをしてでも/“なりたい”をあきらめないの〉と歌う。軽やかなメロディーに反する強い意志。周りの目を気にして、本当のわたしではなくなることの方がよっぽど苦しいことだと山崎は歌詞につづる。

カレッジ・コスモス『幸せのありかはどちらですか』(College Cosmos [Where is the place where I can find happiness?])(MV)

 だからこそ「自分」を大切にすることを、何気ない日常の瞬間と織り交ぜたり、ダイレクトなメッセージで歌詞にしたりして私たちを励ましてくれる。「泣けないぜ…共感詐欺」では、ロックチューンに合わせて「共感」という言葉の危うさを歌う。〈ひとりひとつの人生に ひとりひとつの感情〉という主張から、最後〈オリジナルの衝撃に 泣け!〉と指示語で、大衆の意見に流されそうだった揺れる心をロックさせられ、強いまなざしを得ることができる。〈ひとりで生きられちゃうの」それは素敵なはずでしょう?/胸張る私になって 誰か愛したい〉(「ひとそれ」より)という歌詞は、強いまなざしを得た女の子の決意のようでもある。

 「こうなりたい」と変身願望を抱くことは女の子特有のきらびやかな願いであったはずなのに、いつの間にか「こうならねば」というイメージの呪縛によって、内側も外側も拘束されてしまっていないだろうか。誰しも、揺らがない決意を持つことは難しい。揺らいでしまう自分さえも愛して、自分に誇りを持ちなおすことができる「ひとそれ」をはじめとした山崎あおいが手がける楽曲。これらは、自分の人生は自分の好きなように生きたいと願う、すべての人(女の子も男の子も)に捧げられる応援歌でもあるように思うのだ。「ひとそれ」の〈たくましく推し進む力を誇れ!〉というキラーフレーズは、いつまでも胸の中にとどめておきたい呪文だと思っているので、“New Vocal Ver.”をきっかけに多くの人に届いてほしい。また、12月4日には国立代々木競技場第一体育館という大きなステージでのライブも控えているため、生でも楽曲を堪能してほしい。

■羽佐田瑶子
ライター。映画会社、訪日外国人向け媒体などを経て、現在はフリーのライター、編集。関心事はガールズカルチャー全般。主な執筆媒体はQuick Japan、She is、テレビブロス、CINRA.NETなど。Twitter

コラムPick Up!

もっとみる

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

映画部Pick Up!