Busker Buskerが一つのきっかけに 韓国路上ライブ=バスキン、歴史と流行ジャンルの変遷

 前述した通り、特に弘大におけるバスキンはバンドやソロ歌手の演奏を主として発展してきたが、2015年を過ぎた頃から、ダンスグループによるK-POPなどのカバーダンスが目立つようになった。それまでにもバスキンとしてダンスが行われることはしばしばあり、実際に筆者も弘大などで路上ダンスをする若者を見たことは何度もあったが、フリースタイルなどのHIPHOPダンスであることが多かった。

 バスキンにおけるカバーダンスの増加は、世界的なK-POPブームの後押しに加え、『SUPER STAR K』の後を継ぐサバイバル番組として国民的人気を博した『PRODUCE 101』シリーズなどのアイドルグループオーディション番組の影響があるのではないかと思われる。

BTS(防弾少年団) NOT TODAY 完璧なダンスCover (DOB)

 実際、『PRODUCE 101 シーズン2』出身のJBJメンバー(2018年に解散)、キム・ドンハンは、かつて、弘大を中心に活動するDOBというカバーダンスグループに所属していた。

 また、アイドルがデビュー時や新曲発売時に行うショーケースが、「バスキン」という名目で実施されるケースも年々増えている。今年8月にデビューしたばかりのN.CUSも、弘大に次ぐバスキン名所・新村でデビュー記念のバスキンを行っていた。

最も満足できる12人の少年たちのダンス(N.CUS)

 このような公開ショーケースは、以前であれば東大門・ミリオレの野外ステージなどで開催されたり、あるいは「ゲリラライブ」の名称で行われることがほとんどだったが、最近はあえて「バスキン」と呼ぶことで、インターネットやSNSでの話題化を狙っているように見受けられる。

 このように振り返ってみると、韓国のバスキンはアマチュア/インディーズ音楽シーンにおける役割を持ちつつも、マス的な流行の影響を受けたり、逆にマスプロモーションに影響を与えたりしながら、日々変化しているようだ。まだ知られていないアーティストの発掘といった観点だけでなく、大衆的な音楽の流行を追う上でも、現地でのリアルタイムなバスキンをチェックすることは非常に有意義なのではないかと思われる。

 参考に、YouTube上には弘大や新村で行われている様々なバスキンを撮影した動画を公開する「Daily Busking」というチャンネルがある。日本語字幕の付いた動画もあるので、韓国のバスキンに興味を持った方はぜひ一度ご覧になってみてはいかがだろうか。

 また、ソウルに足を運ぶ際には、ぜひ街中での生のバスキンにも注目していただきたい。

■飯塚みちか
1991年生まれ、早稲田大学文化構想学部卒。
会社員としてSNSマーケティング・プランニング業務に携わりながら、WEBメディアや少女漫画誌を中心にライターとしても活動中。
韓国への長期留学経験があり、とりわけ韓国のユースカルチャー・K-POPファンダムに精通している。
Twitter

関連記事