作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第23回

作詞家zopp、ラグビーW杯テーマソングなどから考える“現代の応援ソング”の傾向

最近のヒット曲は頭韻と脚韻を意識している歌詞が多い

ーーでは、zoppさんが手がけた応援ソングについても聞かせてください。ももいろクローバーZの新曲「stay gold」(11月27日発売)も応援歌とのことですが、作詞するにあたってどんなことを意識されましたか。

zopp:僕が手がけた応援ソングのなかでは比較的低温な歌詞だと思います。ただ、幅広い層の方に向けた応援ソングにしたかったので、高温の要素と低温の要素を半々にしています。〈stay gold〉(いつまでも輝いていて)など強いワードも入れつつ、“君は間違ってない”という柔らかいニュアンスも歌詞に取り入れて、押し付けすぎないようにしています。

ーー今の時代の空気感も取り入れつつ、聴き手の背中も押してくれるような詞になっているんですね。歌詞の内容のほか、音やリズム感などで意識している点もあったら教えてください。

zopp:「どういう言葉を伝えるか」はもちろん大切ではありますが、「メロディを言葉でどう生かすか」も非常に重要だと感じていて、作詞するにあたって常に意識しています。昨今ラップが人気を獲得している背景もあり、最近のヒット曲は頭韻(語句の頭もしくは語の頭で音を揃える押韻)と脚韻(語の終わりで音を揃える押韻)を意識している歌詞が多いです。特にOfficial髭男dismや米津さんの楽曲からはそう感じますし、僕自身もよく取り入れています。

ーー2020年には東京オリンピックが開催されますね。それに合わせて新たな応援ソングも生まれるかと思いますが、どういった楽曲が増えていくと思いますか。

zopp:今回のオリンピックは自国での開催になるので、たとえば、SMAPの「Dear WOMAN」のような、“ホーム感”がある曲が生まれるのではないでしょうか。海外からの観光客も増えるので、英語詞の割合も増えて、今までのオリンピックにはない要素が取り入れられるのではないかと思います。

 あとは、“負けるな”よりは“みんなで一緒に楽しみましょう/頑張りましょう”というニュアンスの楽曲が多くなるかと思います。もし僕が作詞するなら、自国開催の「オリンピック」という大会の成功を願うようなニュアンスを入れたいですね。

【作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」特別編】ラグビーW杯テーマソングなどから考える“現代の応援ソング”

(文・構成=北村奈都樹)

<あわせて読みたい>
第1回(きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く
第2回(SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック
第3回(ワンオクやマンウィズ海外人気の理由のひとつ? 日本語詞と英語詞をうまくミックスさせる方法
第4回(ジャニーズWEST、NEWS、乃木坂46…J-POPの歌詞に使われている“風諭法”のテクニックとは?
第5回(ジャニーズWEST、山下智久、ドリカム……なぜJ-POPの歌詞には“物語”が必要なのか?
第6回(プロの作詞家がバンドの歌詞にアドバイス? 「ワードアドバイザー」が目指していること
第7回(zoppがももクロ新作で試みた“作詞家の作曲術”「ライバルだった人たちと一緒に仕事ができる」
第8回(作詞家zoppが“アイドル育成集団”をプロデュースする理由「生活に根ざしたコンセプトを」
第9回(zoppが考える、SMAPの歌詞が色あせない理由「調べると、あらゆる視点での面白さに気づける」
第10回(亀と山P、テゴマス……作詞家zoppが考える“続編”曲の面白さ「深読みは歌詞だからこそできる」
第11回(『関ジャム』出演! 作詞家zoppが語る、ヒットする応援歌の共通点「平歌とサビは目線が違う」
第12回(作詞家 zoppが明かす、“夏うた”への危機感「季語を使う不便さが顕著に出てきた」
第13回(作詞家 zoppが考える、“流行歌”が更新されない理由 「日本人の琴線に触れるメロディが減った」
第14回(作詞家 zoppが語る、クリスマスソングの作詞術 「back numberはある種、王道」
第15回(zoppが語る、これからの作詞家像「キャッチコピー的な歌詞も書ける人が台頭する」
第16回(作詞家zoppが考える、近年の失恋ソングの傾向 「自分のことではなく“超他人事”を歌っている」
第17回(『関ジャム』出演 zoppが語る、結婚式ソングの作詞法「テクニックはない、というのが特徴」
第18回(作詞家 zoppに聞く、“泣き歌”の歌詞に欠かせないこと 「絶対に取り返せない喪失感が大事」
第19回(作詞家 zoppに聞く、平成カラオケソングの傾向「歌うのが難しい曲の方がたくさん歌われている」
第20回(作詞家 zoppに聞く、2018年のベストリリック 「米津玄師さんは踊りが生きる歌詞になっている」
第21回(作詞家 zoppが予想する、令和に求められる歌詞の傾向 「“低温の応援歌”がもっと増えていく」
第22回(作詞家 zoppに聞く、理想的な“雨ソング”の特徴 「情景と主人公の心情をリンクさせる」

zoppのプロフィールなどが分かるインタビューはこちら

■関連リンク
zoppの作詞クラブ
Twitter

関連記事