欅坂46のダンスは、なぜ見る者を惹きつける? “成長”と“心情”を意識した振付を考察

 見る側の心情を意識したダンスの流れを構築しているのもTAKAHIROの特徴である。番組内での彼の発言で「Bメロで高難度のダンスを見せることで視聴者の意識がサビへと向かう」というものがあった。この視点はひとつひとつのダンスだけに集中しているとあまり湧かない発想である。観客の目線がどこに向かうか、そしてこの踊りを見せると会場はどんな反応になるかを想定した上で振り付けする。それはつまり、連続する一瞬一瞬の動きの積み重ねで一曲のダンスを振り付けているということだ。ひとつの動きに拘らず、全体の流れの中でダンスを見せているのである。

 また、シングルごとに全く違ったダンスを見せているようで、実は似た振りを別の曲に組み込んでいるのも特徴のひとつである。「毎回のシングルで段階を踏むごとに、ちょっとずつ似た振りを入れてくれるんですよ。同じようなステップが次のシングル曲にも入ってたりするんです」と話すのは佐藤詩織(クイックジャパン135号より)。単にその曲に合った動きだからというわけではなく、前作から今作にかけての成長を見せていく。また、振り付けを完全に固定せず、時間が経つにつれて変化させることもある。以前はこうだった振りが今は違う振りに…ということもしばしば。そうした自由度の高さからくる”変化”もパフォーマンスの見所に繋がっている。

 新曲が出るたびに話題になる欅坂46のダンス。彼女たちのパフォーマンスが観客を惹きつけるのは、こうした振付師の優れた発想があるからこそなのだろう。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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