BiSH、“パンクロックボーカル”としての魅力 「星が瞬く夜に」6人の歌声から考察
10月25日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に、BiSHが2度目の出演を果たす。10月10日に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で“BiSHドハマり芸人”が取り上げられたことでも注目度の高まったBiSHだが、すでに音楽ファンの間ではその楽曲のクオリティやパフォーマンス力の高さなどで幅広い層に評価され、確固たるポジションを築いている。
今回の放送では、未発表の新曲「KiND PEOPLE」と合わせて、代表曲「BiSH-星が瞬く夜に-」もメドレー形式で披露されるという。ファンにも人気の高い楽曲であることから、『ミュージックステーション』での初パフォーマンスへの期待は非常に高い。
『BiSH-星が瞬く夜に-』は、インディーズ1作目のアルバム『Brand-new idol SHiT』収録の楽曲。発表からすでに4年が経過しており、メンバーの入れ替えなどを経た現在でも、BiSHを代表する楽曲のひとつだ。ライブでは、ファンからの合いの手やコールなども積極的に取り入れられ、文字通りのキラーチューンとして広く愛されている。
1音目から激しいドラムのビートと滑るような疾走感あるギターリフが印象的なイントロが脳髄を揺らすハードなロックナンバーでありながら、その根幹には確かにアイドルソングらしいキャッチーさも隠されたこの楽曲。メンバーの振り付けもスキップやエアギターなど可愛らしい要素を取り入れたものだが、間奏でのヘッドバンキングやライブでのオーディエンスへ向けたコールやシャウトの熱量にはロックミュージシャンとしてのスタイルをひしひしと感じる。
さらに注目したいのが、メンバー個々の個性がこれでもかと前面に押し出されたソロ回しだ。多くのアイドルソングの特徴として、AメロやBメロの部分にはメインボーカルのソロを採用し、サビ部分はメンバー全員で歌うといった構成が多い点が挙げられるが、この楽曲ではほぼすべてのパートをメンバーがそれぞれソロで歌い、サビの大半はメインボーカルであるアイナ・ジ・エンドとセントチヒロ・チッチが担当する形になっている。
疾走感あふれるイントロから続く〈ああ嫌い oh やめにしない? ハッタリばかり/oh 幾千のここはまるでパラダイス?〉〈間違い 算数苦手な学生たちが oh あくせくと 電卓たたく世界〉のパートを歌うのは、メンバーの中でも抜群の歌唱力を誇るチッチとアイナ。チッチの伸びやかで透明感のある“王道アイドル”な歌声がイントロの骨太な勢いを断ち切ることなくリスナーの心を楽曲の世界へと引き込んだかと思うと、次の瞬間にはアイナの一度聴いたら忘れられないインパクトとペーソスが共存した歌声が一瞬にして見える世界を塗り替えていく。チッチとアイナ、ふたりの歌声のコントラストだけで、BiSHというグループの歌心を司る2本柱がこのふたりであることがよくわかるだろう。
続いて、サビの勢いを盛り上げるブレイクの役割を担う〈ギンギンに拡散なされたアイドルの命は如何に?〉のパートを歌うのはアユニ・D。BiSHに最後に加入した、いわゆる“妹キャラ”の彼女だが、ロックバンド・PEDROのベースボーカルとしても活躍するその歌声にはどこか異質な独特さがある。ベースには可愛らしさもありながら、ファンの間では“アユニ語”とも呼ばれているクセの強さと色気も持ち合わせているアユニの歌声は、楽曲にグッと奥行きを与える役割を見事に担っているようだ。