追悼 ソルリ f(x)デビューからソロ作まで、“アーティスト”としての歩み
フレンチポップ風のリードトラック「Goblin」は、彼女の心の奥底をのぞいているような曲である。“悪い日ではないよ/そのままで大丈夫よ/かなりうんざりしたのは事実だわ”という歌詞は当時の心境をもの語る。奇抜なファッションや言動で誤解を生むことも多い実生活に疲れていたに違いない。だが、ソルリはやはり“アーティスト”だったのだ。それでもめげずに自身の思いを投影した作品を作る姿勢が痛快だった。このままの調子で創作活動を続けてほしい――。そう思っていた矢先にあの事件が起こってしまう。
残念ながら「Goblin」はヒットしなかった。時間をかけて準備した意欲作だっただけに失望が大きかったのかもしれない。同曲でシンガーとしての成長ぶりを十分にアピールしていただけに、その後の展開を見ることができないのが残念でならない。
「Goblin」のミュージックビデオは、ソルリが演じる解離性障害の女性が登場する。彼女は静かにこう言う。“ただ、すべてを終わらせたい”。今となってはこの言葉が胸に刺さる。天国では、デビュー当時のような明るい少女に戻って楽しく過ごしてほしいと心から願うばかりだ。
■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。『ミュージック・マガジン』や『ジャズ批評』など専門誌を中心に寄稿。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著もいくつか。LOVE FM『Kore“an”Night』にレギュラーで出演中。