稲垣吾郎の熟成を見守る楽しみは広がるーー『THE TRAD』初のラジオ生放送レギュラーMCに寄せて

 かねてからレギュラーMCを務めてきた『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)でも、仮想の“女性誌の編集長“という役柄を全うしてきた稲垣。様々なジャンルの情報を特集し、落ち着いた語り口で、上質な“聴く”マガジンタイムを創り上げてきた。編集された美しい『編集長 稲垣吾郎』と、ライブ感のある番組『THE TRAD』。その異なる味わいのラジオ番組が増えるのは、嬉しい限りだ。

 ちなみにトークの面でも『ななにー』で、毎月7.2時間の生放送をこなして磨きをかけてきた。生放送のレギュラーワイドも、おそらくお手の物だろう。効率の悪い進行や、バタバタする展開を嫌い、自ら「イラチ」(イライラしやすい性格)のキャラクターを受け入れて、笑いに昇華させる術も習得。『THE TRAD』でも、そんな茶目っ気を交えながら、楽しい時間を演出してくれるのではないだろうか。

 文学やグルメ、アート、映画……ともすれば敷居が高く感じられる世界への入口に、穏やかな笑顔で佇み、迎え入れてくれるマスター役。それは、稲垣の魅力やキャリアの集大成とも言える。一つひとつの仕事から多くを吸収してきた稲垣だからできること。そして「初めて」のチャレンジを恐れないからこそ、また未知なる魅力が次々と加わっていくのだ。この『THE TRAD』という新たな経験が、どんな変化に繋がっていくのか。“稲垣吾郎”という人の熟成を見守る楽しみは広がる一方だ。

(文=佐藤結衣)

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