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ネオソウルは拡張しているーー“新たなネオソウル像”築くムーンチャイルドを軸に現行シーンを紐解く

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 ネオソウルが今、ふたたび盛り上がっている。

 90年代後半からシーンに登場し、ニュークラシックソウルやオーガニックソウルといった呼称の移り変わりを経て、2000年代前半に最盛期を迎えたネオソウル。ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、マックスウェル、ジル・スコットといったカリスマたちに代表されるこの音楽は、 ナチュラルなアフロヘアやブレイズ姿に代表されるファッション性や、アフリカ回帰主義にも近いスピリチュアリティといった、ある種のカウンターカルチャー的側面を持ったムーブメントだった。

 当時のアーティストをネオソウル第一世代と呼ぶなら、第二世代と呼ぶべき今のネオソウルの担い手たちは、当時のネオソウルの音楽性に多大な影響を受けつつも、それを個々に自分たちの音楽として昇華している印象だ。あくまでも影響源のひとつであり、ゆえに既存の「ネオソウル」のイメージに、音楽面においてもアティテュードにおいても囚われない。それはつまり、ネオソウルがサブジャンルとして確立された、ということだろう。

 そして現在、ネオソウルという言葉の定義は拡張されつつある。ディアンジェロの『Brown Sugar』(1995年)が新しかったのは、70年代のニューソウルに対する強い敬意を持ちながら、それをヒップホップ世代の感覚で“今”の音楽にしたこと。それがネオ――新しいソウルということであれば、第二世代のネオソウルは、90年代後半~2000年代前半の第一世代ネオソウルの影響下にありながら、EDM以降の時代の空気をまとい、“今”の音として更新されたものなのだ。

D’Angelo – Brown Sugar (Official Video)

 かつてのネオソウルの聖地がフィラデルフィアとしたら、今、やはり際立って見えるのはLAだろう。フライング・ロータスやケンドリック・ラマーを始め、ビートミュージックからジャズ、ヒップホップまで様々な才能を輩出するホットスポットになっているLAは、ネオソウルにとっても豊穣の地となっている。

MOONCHILD

 その代表格のひとつが、ムーンチャイルドだ。南カリフォルニア大学で出会った3人によるこのユニットは、学校でディアンジェロやエリカ・バドゥ、ジル・スコットらの音楽と出会い、ネオ・ソウル~ジャズを標榜するようになったという、まさに第二世代。グラスパー、ジル・スコット、ジャジー・ジェフからスティーヴィー・ワンダーにまで評価され、ネオソウル~ジャズの新進気鋭グループとして注目度を拡大させたムーンチャイルドは、2015年にはTru Thoughtsとの契約を手にしてさらに活躍の幅を広げるように。2017年作『Voyager』は、NPRが「あなたが2017年に見過ごしたR&B5作」で紹介され、リード曲“Cure”はSpotifyで700万回再生を突破(執筆時には900万回超)するなど、さらに評価を高めた。

 そんなムーンチャイルドの特徴と言えば、ジェイミー・カラムが「ジャズとR&Bの素晴らしい融合……今のLAのサウンドだ」と賛辞を贈ったように、ジャズとネオ・ソウルを行き来する音楽性だが、エレクトロニックな音色やアンビエント的な響きが取り入れられ、チルでメロウな空気も強く印象に残る。メンバーのアンドリス・マットソンがワイルドフラワー名義で2015年に発表したEP『Water』はまさにアンビエント・ミュージックと言える仕上がりだったし、ムーンチャイルドが『Voyager』発表時にその影響源をプレイリスト化した「”Voyager” Inspirations」には、ボン・イヴェール、シュローモ、MXXWLLといった、エレクトロニックな意匠を取り入れることに長けたアーティストたちの楽曲も少なくない。彼らのFacebookページのジャンル欄には実際、「ネオソウル、ジャズ」と続けて「エレクトロニック」と記載されている。

      

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