森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.166

SKY-HI×SALU、OAU、the pillows……それぞれのルーツが見えるアーティストの新作

竹原ピストル『It's My Life』(CD)

 昨年12月に初の日本武道館公演を成功させ、「ON THE ROAD」(ドラマ『Iターン』エンディングテーマ)、「おーい!おーい!!」(映画『泣くな赤鬼』主題歌)などの話題を次々と発表。いまや日本の音楽シーンに大きな存在感を残している竹原ピストルだが、自分自身の生活、人生にしっかりと根差し、フォーク、カントリー、ブルースなどを自然に反映させた“アコギと歌”で描き出すスタイルは微塵もブレていない。そのことを象徴しているのが、ニューアルバムのタイトル曲「It’s my life」だ。まわりの状況がどうであれ、他人が何を言おうとも、〈俺の身の丈 今更 伸びも縮みもしねーさ〉という気持ちを抱えながら生きていく。こういう歌を真っ直ぐに歌えるからこそ、竹原は多くのリスナーに支持され、信頼を得ているのだ。

竹原ピストル - ON THE ROAD(Live Short Ver.)
Ivy to Fraudulent Game『完全が無い』(通常盤)

 メインソングライターの福島由也(Dr/Cho)ではなく、ボーカリストの寺口宣明が作詞・作曲を手がけた最新曲「模様」(TVアニメ『トライナイツ』エンディングテーマ)はIvy to Fraudulent Gameにとって大きな転機となった。フォーキーな手触りとJ-POP的なポップネス、叙情豊かな歌詞がひとつになったこの曲は、バンドを次のフェーズに進めると同時に、シンガーとしての寺口の魅力を大きく前景化させたのだ。その効果は2ndアルバム『完全が無い』にも明確に表れている。オルタナティブ、マスロックからの影響を感じさせる緻密にして緊張感に溢れたアンサンブル、そして、感情豊かな歌心を備えたボーカル。この二つの要素のコントラストこそが、Ivyの軸であること改めて実感できる作品である。

Ivy to Fraudulent Game ”模様” MUSIC VIDEO

 ■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

関連記事