柴 那典の新譜キュレーション
Cornelius、OGRE YOU ASSHOLE、betcover!!…晩夏のチル/サイケデリック新譜8選
MINAKEKKE『OBLIVION e.p.』
シンガーソングライターのユイミナコによるソロユニット、MINAKEKKE。読み方は「ミーナケッケ」。2017年にリリースしたデビューアルバム『TINGLES』から2年ぶりとなる作品が、この『OBLIVION e.p.』。
一聴して感じたのが、ゴシックで退廃的なムード。Portisheadにも通じるような、研ぎ澄まされたビートと悲哀を感じさせるメロディセンスだ。特に「Acid」の、ノイズとストリングスのループを基調にビートレスでも研ぎ澄まされたグルーヴがいい。
ラナ・デル・レイのニューアルバム『Norman Fucking Rockwell』も素晴らしかったが、そこに通じるものも感じる。抑えた憂鬱の美しさ。
MON/KU『m.p』
ダークでエクスペリメンタルで、でも並々ならぬセンスを感じるトラックメイカー/シンガーソングライター。彼の名前を知ったきっかけは、やはりSpotifyとTwitterだった。ネットレーベル<Ano(t)raks>から配信リリースされた初EPが、この『m.p』。音楽活動を開始したのは2018年12月。今年1月にSoundCloudにて公開された初楽曲「S I N K」、そして6月に<Ano(t)raks>からリリースされた「if」が評判を呼んでいて、聴いてみたらたしかにかなり惹き込まれた。
想起したのはジェイムス・ブレイクやFKA Twigsあたりで、アバンギャルドなエレクトロニックミュージックなんだけれど、同時に「歌」としての強度もある楽曲。
こういう人が出てくるところに、日本のアンダーグラウンドの奥深さを感じる昨今。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter