ぞんび、甘い暴力、MAMIRETA……独自の世界観を持つ刺激的なV系バンド

 夏に縁遠いイメージを持たれがちなヴィジュアル系バンド。しかし、意外にも夏には大規模なヴィジュアル系のフェスがいくつも開催されている。中でも今回紹介するのは、独自の世界観を持つ刺激的な3バンド。うだるような暑さの日常から逃避するべく、ぜひ新たな世界を垣間見てみてほしい。

暑さとストレスを吹き飛ばしてくれる、ぞんび

ぞんび『すべてが終わる夜に/肉食バクテリアン』(通常盤)

 2015年に始動したぞんびは、X JAPANらが主催した『VISUAL JAPAN SUMMIT 2016』や、Shibuya O-Groupのライブハウスを一斉占拠する毎年恒例のフェス『渋谷が大変』、新木場Studio Coastで行なわれたBugLug主催の『バグサミ』など、数多くのヴィジュアル系フェスに出演。代表曲である「死ねばいいのに。」のライブ映像は、YouTubeで43万回再生を突破するなど、注目度も高い。

ぞんび「死ねばいいのに。」Live PV

 所属事務所は、お茶の間にも知られるヴィジュアル系バンド、ゴールデンボンバーも擁するユークリッド・エージェンシー。しかし、ぞんびが注目を集めているのは、決して“ゴールデンボンバーの後輩”という看板だけではない。ぞんびの魅力は、“わかりやすさ”だ。「腐り姫」「墓場 de ラヴソング」などバンド名に通じるホラーなテイストを含む楽曲や、“感染者”というファンの名称、両手を前に突き出す“ぞんびポーズ”で撮影されたアーティスト写真など、徹底されたわかりやすい世界観がぞんびの武器なのだ。また、おどろおどろしい曲名とは裏腹に、楽曲自体はキャッチーなフレーズが多く、耳あたりの良いメロディで構成されているのも特徴だ。奏多(Vo)の伸びやかな歌声との相性も抜群。ホラーな世界観で統一しつつも、聴きやすさも大切にしているからこそ、多くのリスナーの心を掴むのだ。

ぞんび「クソったれが」【OFFICIAL MUSIC VIDEO [Full ver.] 】

 ライブ定番曲である「クソったれが」では〈どいつもこいつもクソが!!!!目障りだから俺以外消えればいい〉と、ドストレートに負の感情をぶちまける。日常生活で溜まったストレスを発散するのにもってこいの一曲だ。記録的な暑さを叩きだした今夏。ぞんびの力で、夏の暑さとイライラを解消してみてはどうだろう。

甘辛の二面性がクセになる“ヤンデレバンド”、甘い暴力

 2016年結成の甘い暴力も、ぞんびと同様多くのV系フェスに引っ張りだこの若手。従来のヴィジュアル系シーンで人気のバンドとは一味違う、独自の世界観で10代を中心とした若い女性の需要を掴んでいるバンドだ。その世界観は歌詞を見るとわかりやすい。甘い暴力の歌詞は、“病みに寄り添う優しさ”と“激しい暴力的衝動”の二面性を持っている。「笑顔でいるってめんどくさい」では〈最近まともに笑ってない 楽しそうな周りの中へ だけどなんだか入っていけない 笑顔でいるってめんどくさい〉と、周囲に馴染めない孤独感を歌い、「だいじょばない」では〈こうやって 私壊れてく いつだって自分のせいなんだ そうやって気づかれないまま 消えていく 私を見つけて〉と、自己肯定感の低い女性の深層を叫ぶ。逆にバイオレンス要素の強い「故に、ドエス。」では、〈君の喉に手を突っ込んだ〉〈愛情の起伏を抑えられない〉とあられもない破壊衝動を歌う。 時には寄り添い、時には突き放す。そんな絶妙なバランスが、現代に生きる女性の心に突き刺さるのだろう。

 また、歌詞だけではなく、楽曲も一筋縄ではいかないのが、甘い暴力の魅力だ。聴きとりやすい明瞭な発音のボーカルと、時折織り交ざるラップ。甘い歌声でキュートな女の子になりきったかと思えば、ヘヴィな重低音にデスボイス……と、同じ曲の中で目まぐるしく変化していく。様々な角度からリスナーに向けられるアプローチは、その一部を切り取られ、TikTokで人気を得ているものもある。中でも〈だって 私 うさぎなんだもん〉と、かわいさ全開のセリフから始まる「性欲うさぎ」は、TikTokのメインユーザーである10代~20代前半の若い世代の女性の心にハマり、10,000件以上の動画に使用されるほどに。“こじらせ女子”の心をガッチリと掴んで振り回す甘い暴力。目にする機会があった場合は、彼らの飴と鞭に振り回されてみるのも、良いかもしれない。

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