MUCC ミヤの“40歳”をlynch.やROTTENGRAFFTYが祝福 誕生日イベントレポ
その熱気を引き継いで登場したのがROTTENGRAFFTYだ。ステージに上がるや否やフロアを煽り倒していく。すでに熱すぎる会場にギターの単音リフが鳴った瞬間、会場が爆発的に沸いた。のっけからMUCCのキラーチューン「蘭鋳」で奇襲をかましたのだ。意表を突かれた観客のボルテージはまだ上がるのかというほどに高まっていく。もはや定位置などわからない程乱れたフロアに「ロットン始めるぞ!」の声で「PLAYBACK」「夏休み」と続けていく。これまで漂っていたダークな空気感を吹き飛ばすかのような飾り気のないラウドサウンド。ツインボーカルによるスキの無い煽りの応酬。そのステージの熱量にあてられ、フロアも暴徒と化していく。
エレクトロなイントロからダンサブルな4つ打ちが鳴り響き「D.A.N.C.E.」へ突入すると、会場全体が大きく揺れ、あちこちにサークルピットが発生。先程まで大きな生き物のようだったフロアは、さながら大荒れの海原のようにうねっていく。「やりてぇように今日はやれよー!」と「世界の終わり」「THIS WORLD」と彼らの攻勢は一層激化。ラストの「金色グラフティー」で先ほどの煽りに応えるかのように、8の字に頭を振り回すヘドバン、あちこちで発生するサークルピット、男女問わず続出するダイブなど自由に楽しんでいく。“無法地帯”を作り出し、彼らはMUCCへとバトンを繋いだ。
そして、いよいよこの日の主役・MUCCが登場。SE「壊れたピアノ」からメンバーがそれぞれ現れてジャム形式で演奏に参加していく。ミヤが登場した際にはこの日一番の大歓声が沸いた。ピアノを交えたセッションに逹瑯(Vo)もハープで参加し、無法地帯を異世界へと塗り替えていく。ギターの単音リフが鳴り響くと同時に、ステージ両脇からバイオリンを携えた男女が登場し「サイコ」が始まる。MUCCが持つ独特の退廃的な空気を、ピアノとバイオリンの音色がさらに深化させていく。緻密に組み上げられた重低音が、会場を地下へ地下へと落としていくかのようだ。
バイオリン2人がステージを去った後に「塗り潰すなら臙脂」へとなだれ込むと彼らの圧巻の轟音とフロアの熱気が一体となり、会場ごと地獄に落ちたかと錯覚するほど異様な空気に包まれていく。モッシュ、ダイブの嵐が巻き起こる中、ステージを暴れまわる彼らはまるで鬼にすら見える。続く「アイリス」のエフェクティブなドラムと逹瑯の語りで時空を歪ませたかと思いきや、「謡声』」この日の暑すぎる外界とリンクする夏の情景を演出。爽やかな空気感にフロアも思わず笑顔で溢れていく。新曲の「アメリア」ではフロアに大きなサークルピットを作り出し、「ミヤが夏を連れてきました!」の逹瑯の声から「ハイデ」へ。どこか子供の頃を思い出させてくれるような爽やかな夏の匂いが会場を包むと、あちこちで涙が流れていた。そんな空気が流れたのも束の間、フロアは分断されこの日の主役であるミヤが客席へ。担がれたまま「MAD YACK」の超攻撃的なリフを弾き倒していく。
「全てをぶち壊すカウントダウンを始めようじゃないか」という逹瑯の言葉からの「カウントダウン」皆残りの体力を出し切るかのようにフロアを駆け回り、あらん限りの声を上げていく。追い打ちをかけるように「蘭鋳」のイントロのリフが鳴ると、今まで体力を温存していたのではと錯覚するほど全体が一斉に暴れ始める。そこは日常とは無縁の、狂気が渦巻く凄まじい空間だった。そして最後は再びバイオリンを交えての「Living Dead」。逹瑯とミヤの美しい掛け合いから始まり、轟音が会場を満たしていく。これまで暴れ倒していた観客席はじっと耳を傾け、ステージから降ってくる激情のサウンドを余すことなく受け止めるかのようだ。だがそれでも音が鳴りやむ最後の一瞬まで会場の熱気が冷めることはなかった。
筆者自身今まで様々なライヴを見てきたが、ここまで攻撃的なセットリストを全バンドが組むようなイベントをかつて観たことがない。誰よりも音楽を愛しているミヤという男が主役だからこその、最高にアツいバースデーパーティーであった。
(写真=西槇太一)
■タンタンメン
自身の活動から得た経験を元に音楽記事を執筆する元バンドマンのフリーライター
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