BUMP OF CHICKENの隠しトラックにあるオマケ以上の価値 サブスクだけでは伝わらないピュアさ

 例えば『ユグドラシル』のシークレットトラック「O-TO-GA-MEはーと」では、ちょっとしたコントから曲が始まり、架空の音楽番組のランキングで、架空のアーティストをいくつも紹介。そんな遊び心しかないような流れの中で「O-TO-GA-MEはーと」を披露する。また、『車輪の唄』のシークレットトラックには「星のアルペジオ」が収録されており、この曲は増川弘明の全力投球の演技を堪能することができる。その空気感は、まるでメンバーのオフショットそのもの。ステージから降りた後の素のBUMP OF CHICKENの顔が、そこにあるように感じるのだ。

 国民的なバンドになると、プレッシャーゆえにバンド内で軋轢が生じたり、どこかピリピリとしたムードが立ち込めたりするという話もよく聞く。そうでなくても、大人の色に染まってしまい、コントロールされた、理想のバンド像のみが流布されるようになってしまうことも少なくない。しかし、少なくともファンの視点から見たとき、BUMP OF CHICKENはそういう空気から距離を置いたバンドのように感じる。いつまでも「幼馴染同士で結成した、少年のような仲良しバンド」でいるように見える。

 つまり、BUMP OF CHICKENが持っている、彼らならではのピュアネスの象徴がシークレットトラックに詰め込まれているのである。ピュアネスを捨てずに成熟していくという、一見すると背反する絶妙なバランスを達成したBUMP OF CHICKENならではの魅力ーー言い換えれば、少年の心を持ったまま大人になったBUMP OF CHICKENの世界観のひとつが凝縮されていると言ってもいいかもしれない。だからこそ、BUMP OF CHICKENのシークレットトラックには、単なるオマケ以上の価値があるのだ。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

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