森高千里、『FNSうたの夏まつり』でジャニーズWESTらとコラボへ 披露曲から演出意図を探る

 「ロックン・オムレツ」はもともと、子ども向け番組『ポンキッキーズ』(フジテレビ系)の挿入歌として作られた曲だ。ママが作るオムレツの美味しさやママとパパが仲良しであることを子どもの視点から歌っている。これに対し、「素敵な誕生日」は、明日の彼の誕生日には手料理を作ろうと前日から練習する女性が主人公。「私がオバさんになっても」で描かれたように恋人同士が互いに歳を重ねていくその先には、「素敵な誕生日」みたいな出来事や、「ロックン・オムレツ」的な家庭の風景が待っているかもしれない。森高の実人生とも重ねてそんな想像をしてしまう選曲だ。これらの曲には、多くの人が共感できる、日常レベルの普通のしあわせが素直に表現されている。

 今のLittle Glee Monsterくらいの年齢だった初期の森高から考えると、そのような表現をするアーティストになったのは意外な展開だった。森高=ミニスカのイメージを広めたシングルに『ザ・ストレス』(1989年)があった。そのジャケットや表題曲のMVにおける彼女のウェイトレス姿のインパクトは大きかった。同曲のコスプレはすらっとした脚に注目させるもので、ウェイトレスとして運んでいる料理のことなどどうでもよかったのだ。

森高千里 『ザ・ストレス -ストレス 中近東バージョン-』 (PV)

 しかし、そうしたビジュアル先行のキャラクターから、手作り料理の温かさのような、ありふれているけれど大切なことを歌う人になった。かといって、メイクやファッションなど自分がきれいであろうとする楽しみを手放すわけではない。この微妙なバランスがとれているのが、森高千里なのである。稀有な存在だと思う。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

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