宮野真守、梶裕貴……マルチな才能をミュージカルでも発揮? 声優と舞台の関係性から読み解く

声優=声以外もバランスの取れたハイポテンシャルな存在

 梶が出演する朗読劇『恋を読むvol.2「逃げるは恥だが役に立つ」』には、他にもベテランの朴璐美をはじめ、石川界人、細谷佳正、内田真礼、斉藤壮馬といった声優が出演。『ウエスト・サイド・ストーリー』には、宮野とWキャストで蒼井翔太が主演する他、アニータ役を三森すずこが務める。声優で、子役や舞台出身の人は意外に多く三森もそうであることは有名だが、全体的に声優がミュージカルなどの舞台に起用されることが実に増えている。それには、どんな理由が考えられるのだろうか?

 1つは、舞台の演技と映像の演技の違いだ。舞台の演技は、テレビや映画といった映像の演技と同じように考えられがちだが、決してそうではない。決定的な違いは画角で、テレビや映画であれば、見て欲しいところにズームが当たり、表情や動きで見せることができる。舞台の場合は、いちばん後ろの観客まで演技を届けるために、演技力だけでなく大きな動きや声量も必要だ。両方で活躍できる役者もいるが、全体数で言えば稀な存在だ。ドラマや映画などで活躍する役者とは別に、“舞台役者”という言葉があるのは、そこに大きな隔たりがあることの表れだろう。声優の場合は、映像ではあるものの、二次元のアニメの絵に視聴者を引き込むための声の説得力が必要で、自然体でありながら、同時に1トーン上げた声や1段階テンションを上げた演技が求められる。声優はどちらかと言えば、舞台役者のほうに近いと言えるだろう。

 また近年は、多彩な分野で高ポテンシャルを持つ声優が増えた。声優の養成学校では、即興劇を行うエチュードなどの演技レッスン、歌やダンスのレッスン、ラジオや配信の際の講義など、さまざまな分野に対応できるようにレッスンが行われている。以前は声の演技に特化したのが声優であったが、現在は他の部分においてもレベルが高く、全体のバランスが取れた存在だ。

 声優としての人気と実力を追い風に、舞台への進撃を始めた声優たち。だからと言って、決して声優を踏み台にしていようというわけではない。彼らが役者をどのように極めていくかにも注目だが、その先でフィードバックされる声優としての演技にも興味がある。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

関連記事