「プロデューサーさん感謝祭 in 新木場スタジオコースト」レポート
『アイドルマスター シンデレラガールズ』ヒット続く理由 魅力的なアイドルと楽曲の数だけある個性
続いては大坪、立花、種﨑のキュート組がステージに残ってラウンジーなテクノポップ「アタシポンコツアンドロイド」(2013年)へ。コケティッシュな振り付けも込みでアイドルらしさを全開にした楽曲と言える。3曲目の清らかなハーモニーポップ「メッセージ」(2014年)は全体曲ということで種﨑、高田、桜咲の3色混合トリオが歌唱。終盤には大坪、青木、原の3人が上段ステージに姿を現して締めの振り付けを一緒に行うと、今度はTVアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』のオープニングテーマ「Star!!」(2015年)の出だしを6人でパフォーマンスし、続きは大坪、青木、原が引き継いで歌う。
この時点でおそらく多くのプロデューサーが気づいていたと思うが、この日のライブのセットリストは、トップ10入りした楽曲の中からセレクトしたものをリリース順に並べて構成。いわば『シンデレラガールズ』の歴史を音楽で辿るライブになっており、それだけに人気曲が次から次へと惜しげもなく投入されていく。5曲目のセクシーかつ愛情過多なR&B風デジタルポップ「Love∞Destiny」(2016年)を歌ったのは長島、立花、松嵜というレアな組み合わせ。歌詞のキメにあたる部分〈∞(アンリミテッド)〉の妖艶なつぶやきは立花が担当し、フロアからは大歓声が上がる。
さらにここでスペシャルな展開として、趣味でDJをたしなむという桜咲によるDJタイムがスタート。アプリゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』のテーマソング的な位置づけにある「とどけ!アイドル」(2015年)を皮切りに、「Snow Wings」(2016年)や「桜の風」(2018年)など、この日に登壇したキャストの関わる楽曲を中心に繋いで巧みに盛り上げる。時おりマイクを使ってプロデューサーたちを煽る姿も堂に入ったもの。会場の新木場スタジオコーストは、週末はageHaの名前でクラブイベントを行っている国内有数のべニューということもあり、音響のクオリティーも抜群だ。
そこからAJURIKAにDJをバトンタッチすると、彼は「まだちょっとだけかけたい曲があるんだ」と語って、自身が提供したトランス調のダンスポップ「Nation Blue」(2013年)をスピン。そこから「Tulip」(2016年)、「Orange Sapphire」(2013年)といった人気曲を挿みつつ、「Naked Romance」(2013年)、「Needle Light」(2019年)、「Neo Beautiful Pain」(2017年)と自らの制作した楽曲を連続でかけてフロアを熱狂させる。
そんなAJURIKAのDJプレイからの流れで、ステージに長島、桜咲、青木のクール組が登場し、リキッドファンク×フューチャーベースといった趣きの幻想的なナンバー「さよならアンドロメダ」(2017年)のライブパフォーマンスに突入。そこから今度は松嵜、原、高田のパッション組が元気いっぱいに姿を現し、アコギの音色がブラジリアンドラムンベースっぽいハイテンションポップ「SUN FLOWER」(2017年)で一気に駆け抜ける。
そして再び9人のキャストがステージに勢揃いすると、「感謝の気持ちを込めてこの曲をお送りしたいと思います」(青木)と、アイドルからファンへの「ありがとう」のメッセージをダイレクトに綴った感動的なバラード「always」(2017年)を、全員で一節ずつ想いを込めながら大切に歌い継いでいく。最後は感謝と希望に満ちた開放的なナンバー「EVERMORE」(2017年)で華やかにゴール。新しいアイドルを迎えながらこの先も広がり続けるであろう『アイドルマスター シンデレラガールズ』の眩しい未来を予感させながら、イベントは幕を閉じた。
以上、多彩な楽曲で構成された『感謝祭』だったが、そのいずれもがオリコンチャートでトップ10入りしているのだからすごい。しかも本作品にはアイドルが190人も存在しており、その数だけの個性があるのはもちろん、ユニットなども考慮に入れるとほぼ無限の掛け合わせが可能である。魅力的なアイドル達によってトップ10入り作品が100タイトルを超えた今もなお楽曲がマンネリ化することはなく、フレッシュな新曲が登場し続けている。最近では、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』のTVCMにゆずが出演した縁で、北川悠仁が「無重力シャトル」(2019年)という楽曲を書き下ろすトピックもあった。今後も『アイドルマスター シンデレラガールズ』から新たなヒット曲が生まれていくに違いない。
■流星さとる
流浪の人。アニメ・声優・アニソン関連のライター仕事、よろず承ります。お問い合わせは【ryuseisatoru@gmail.com】までどうぞ。