スガ シカオ、タフネスとファンクネスが増した最新にして最高の姿 アルバムツアーNHKホール公演

 そろそろライブは終盤、ここで一気にスピードが上がった。「あんなこと、男の人みんなしたりするの?」から「正義の味方」「91時91分」と、強烈なうねりを持ったファンクビートに乗っかって、ギター、ベース、トロンボーンが最前線に飛び出して煽り、スガが「俺たちの音が聴こえるか!」と叫ぶ。このバンド、一度火が付いたら誰にも止められない。「アストライド」はじっくり聴かせるタイプの曲だが、アコースティックギターをかき鳴らしながら叩きつけるシャウトが最高にエモい、ロックバラード的な高揚感が素晴らしい。再び速度を上げ「Re:you」から「コノユビトマレ」へ、延々と続く快楽ビートの上で坂本が豪快なスラップを繰り出し、熱狂した客席がワイパーを繰り返す。ステージど真ん中に立つスガ シカオの存在感はまさにファンクスターで、黒のタンクトップ姿でエレクトリックギターを弾く体つきも声も、マッチョと言いたくなるほどたくましく見える。この年になって新しいチャレンジができるーーそのために必要なことを日頃からしているんだろう。まぶしいオーラを放つ肉体と声が、うらやましいほどにかっこいい。

 サコッシュの売り上げがびっくりするほど良くないのでよろしくお願いしますーーツアーグッズ紹介でひとしきり笑いを取ったあと、アンコール1曲目はニューアルバムの中でとりわけエネルギッシュなファンクチューン「マッシュポテト&ハッシュポテト」。さらにライブで漏れなく熱狂を巻き起こすキラーチューン「俺たちファンクファイヤー2019」は、エリック・クラプトン「Layla」のリフを「令和」に置き換えたオヤジギャグを発端に、コール&レスポンス、手振り、ドラムソロ、タオル回しなど遊びの限りを尽くし、平成31年に合わせた31回のクラップで締めくくる。とびきり楽しい曲だがそれだけじゃない、曲中で思わず叫んだ「みんながロックと言ってる中で22年間ファンクをやり続けてきました。これからも俺はたった一人でファンクをやり続けます!」という言葉を僕は、ずっと覚えておきたいと思う。

 ラストを飾った猛烈アッパーファンクチューン「ドキュメント2019」は、Mummy-Dがいない代わりにトロンボーンのTocchiが大活躍。最後の一瞬まで沸騰したままでスパッと終わる、実に爽快なエンディング。「最高だぜ。この瞬間忘れんなよ!」と叫ぶ、サングラスの奥の目はきっと笑ってるんだろう。メンバー全員の挨拶を終え、去り際に「ただの天才・スガ シカオでした」とおどけてみせる余裕。この年になってさらにタフネスとファンクネスを増し、前人未到のチャレンジを続けている、なんと恐るべしスガ シカオ。彼の創作とパフォーマンスのピークはこれからやって来ると確信した、至福の2時間半だった。

(文=宮本英夫/写真=岸田哲平)

スガ シカオ オフィシャルサイト

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