音楽アート集団 CHRONICLEが描く壮大な世界 物語/映像/音楽が影響し合う制作手法から解説

音楽アート集団CHRONICLEが描く壮大な世界

 6月7日にYouTubeで公開された「宇宙」予告編アニメ映像では、それぞれに喪失感を抱えた17歳の男女「柏木 一樹(かしわぎ いつき)」と「一ノ瀬 空(いちのせ そら)」とを主人公に、現代を舞台にした物語の断片が明かされている。その予告編のクライマックスで流れているのが、6月21日にリリースされた配信デビュー曲「宇宙」だ。

 デビュー曲「宇宙」は物語のテーマソングであり、“歌”に宿った在る力が過去、現在、未来を行き来する“CHRONICLE”の物語のなかで、「始まりとその先」を示す楽曲となっている。

 HIDEYA KOJIMAが作曲したこの楽曲は、ピアノの音色が印象的な序盤を経て、徐々にバンドアンサンブルが盛り上がり、サビでギターが広がるドラマチックなギターロック。と同時に、アレンジとして加えられているオーケストラはどこか映画音楽的でもあり、映像と合わさったときに最大の効果を発揮するものになっている。また、T.B.Aのボーカルは高校生を主人公にした物語の等身大の心情を表現するような雰囲気で、その歌声が物語にとって非常にリアルな魅力を引き出しているように思える。

 そして、loundrawによる歌詞は、「宇宙」予告編アニメの2人の台詞と密接にリンクしたものになっている。たとえば、非常に印象的なのは「何度 何度でも」という言葉が歌詞の中に繰り返し登場すること。この言葉が幾度もリフレインされることで、過去に挫折を経験している(であろう)空と一樹が前に進んでいく雰囲気が魅力的な形で表現されている。特に、楽曲においてその最後のリフレインとなる終盤のサビの〈何度 何度でも生きるよ/見上げた宇宙で/君を見つけるまで〉という歌詞は、「宇宙」予告編アニメのクライマックスで、2人が孤独や喪失感を交互に独白しながら「それでもこうしてどんなときも」「生きていたいと願うのは」「見届けてくれる誰かに」「必要としてくれる誰かに」「いつか、出会いたいからだ」と声を重ねた後に映し出される、満天の星空の風景と絶妙にリンクしている。映像から音楽が浮かび、音楽から映像が浮かぶ――。CHRONICLEの魅力が鮮明に伝わる瞬間になっている。

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