ドラマ『あなたの番です』は主題歌でも謎が深まる? Aimer「STAND-ALONE」歌詞を読み解く

〈探していたはずの線を 失くしてきたもので描いて
曖昧過ぎたのは 始まりとルールの性能
何も守れないなら 刻んだ名前も 失くしてもいいよ〉

 また、この部分は、まさに『あなたの番です』の冒頭、住民会で何気なくそれぞれが“殺したい人”を書いてその紙をランダムに引いていったすべての始まりそのもの。「自分が書いた人が殺された場合は、次はあなたがその犯人が望む人を殺す番です」という曖昧なルールに追いつめられていく。交換殺人ゲームに巻き込まれ、大切な人が危険に犯されるくらいなら、“殺したい人”を書いたメモ=〈刻んだ名前〉を無しにしたいと葛藤するのは菜奈の想いであり、菜奈亡き後は翔太の悔いを表すように思える。

〈最初に 君がついた嘘 夜明けは来るよと囁き
泣きたい ほど あの時間こそが幸せだった
星座すら逃げ出して
一人立ち尽くす 星の見えない夜
STAND-ALONE〉

 未来に希望を抱かせるような言葉を翔太にかけ、交換殺人ゲームのことに限らず、自分の結婚のことさえ隠していた菜奈の嘘。それでも菜奈がいたあの頃が幸せで戻りたいのに、ついに星になった菜奈にさえ見放された気分で、孤独にさいなまれるという、翔太の想いにぴったりと重なる歌詞だ。

 このように、最終話までは一人で真実を掴もうと奔走する菜奈の歌に聞こえていたものが、最終話で菜奈を失い、菜奈の意志を引き継ぐかのように真相に迫っていく翔太の歌に聞こえてくるのだった。

 ちなみに、このドラマの企画・原案は秋元康であり、彼は以前「恋人のことをどれくらい知ってますか?」をコンセプトにしたドラマ『愛してたって、秘密はある。』を企画し、まさかの結末を用意していた。今回の『あなたの番です』も、夫婦の信頼関係を問うような予想外の展開が待っているかもしれない。また、「STAND-ALONE」のMVに尾野幹葉が出演していた意図とは? 物語がラストを迎える時には「STAND-ALONE」の聞こえ方が、さらに変化する可能性もある。ぜひ本日の『特別編』や『反撃編』と照らし合わせながら、歌詞を味わってみてほしい。

■深海アオミ
現役医学生・ライター。文系学部卒。一般企業勤務後、医学部医学科に入学。勉強の傍ら、医学からエンタメまで、幅広く執筆中。音楽・ドラマ・お笑いが日々の癒し。医療で身体を、エンタメで心を癒すお手伝いがしたい。Twitter

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