「LIke I do」インタビュー
新時代のSSW 川口レイジが語る、ギターとの“運命的な出会い”からLAでのコライトまで
LAでのコーライティングに挑戦して変わったこと
ーー現在の川口さんの音楽性には、どういう経緯でたどり着いたのですか?
川口:実は、上京してから1、2年くらいは別の名義で活動していて。今の「川口レイジ」名義に変わったのは、それだけ音楽性が大きく変わったからなんですよね。
ーーどのように変わったのでしょうか。
川口:まず、ライブの時のエンターテインメント性をもっと高めたいという気持ちがありました。それまではギターやピアノの弾き語りのみだったので、なかなかノリのいい楽曲の表現が難しくて。洋楽などを聴きつつ色々と試行錯誤していたときに「環境を変えて気分転換したり、刺激を受けたりするのにロサンゼルスで活動しているトップライナーたちと、コーライティングをしてみるのはどうだろう?」というお誘いがあって。そこから音楽性がガラッと変わっていったんです。
コーライティングというと、日本ではまだあまり浸透していないと思うのですが、海外では頻繁に行われています。逆に「今まで1人で作ってたの? すごいね!」って言われるんですよね(笑)。複数人でチームを組んで曲を作るって、一体どんな感じなのだろう? と思っていたのですが、自分も挑戦してみたことで、なぜ海外ではあんなにすごい曲が次々と生まれるのか、少し謎が解けた気がします。
ーー「集合知」というか、複数の才能がかけ合わさることで、1人では到達し得ない境地にいける感じなのでしょうか。
川口:そうなんです。何よりも、(コーライティングを)やっていて楽しかったですね。今までずっと1人でこもって作業していたのが、みんなで世間話をしつつ作っていくという。「最近、あいつに彼女が出来たんだって」なんて話しているうちに、いつの間にか曲が出来上がっているんです(笑)。ずーっと喋ってるんですよ、「お祝いのプレゼントどうしよう?」とかなんとかそんなことばかり。
ーー(笑)。例えばコーライティングのメンバーが変わると、曲の作り方も変わるのでしょうか。
川口:いや、曲作りのプロセスそのものには、さほど違いはないと思います。極めてシンプルなんですよ。プロデューサーのプライベートスタジオに集まって、まずはみんなでリファレンスの曲を聴く。そこからプロデューサーが「じゃあこんな感じかな」と言いながら、軽く打ち込みのトラックを作るんです。「あ、その感じいいですね」って僕や周りが言うと、「じゃあメロディを乗せてみよう」みたいになって、さらに肉付けして仕上げていく……基本はそんな流れですね。フォーマットが決まっているからこそ、新たにチームに加わる人も戸惑わずに済むというか。
ーーコーライティングすることで、今まで気づかなかった自分の持ち味を意識することなどもありましたか?
川口:たくさんありましたね。他の人たちが、鼻歌で考えるメロディのレベルの高さに驚いたり、それでメロディセンスが磨かれていったりする部分ももちろんあったし。あと、意外と僕は夏っぽいメロディが向いているのだなということにも気づかされました。今までは、どちらかというと冬っぽいメロの方が自分には向いていると思っていたんですけどね。「夏もいけるんだ」という発見は大きかった(笑)。ずっと1人でやっていたら、おそらく「夏っぽい曲を作ろう」という発想すら生まれなかったもしれません。
ーー前作「R.O.C.K.M.E. ft. Marty James」や、今回の「Like I do」でもコーライトしているマーティ・ジェイムスとの作業はどうでしたか?
川口:それまでの人たちは比較的年齢も近かったし、音楽のスキルもお互い同じくらいだったので、ざっくばらんに意見を交換しながら作業もできたんですけど、マーティさんに初めて会った時は、そのオーラに圧倒されました。身長も190センチ以上あるし、ものすごくエネルギッシュだし、スイーツもガンガン食べるし(笑)。
最初のコーライティングは、スタジオにマーティさんがやってきて、わーっと作業してあっという間に終わりっていう感じでした。だけど、そこから自分自身も音楽的に少しは成長したし、英語も上達したので、少しずつ意見も言えるようになってきましたね。「こっちのメロディの方が良くない?」って言ったら「おお、それいいね。じゃあそれでいこう!」と返してくださって。本当に彼は決断が早いんですよ。