シンガー xiangyuとは何者? 水曜日のカンパネラチームバックアップの“謎の新人”に迫る
では、xiangyuのキャラクターとはどんなものか。彼女の魅力を、ケンモチは「裏表のない性格。天真爛漫さ。努力家であるところ。芯があって通る声(居酒屋でどんなに混んでいても必ず店員を呼び止めることができる)」、福永は「感情が表に出やすいところ。他人から見て何か言いたくなってしまうような抜けや隙間があるところ。慎重でありながらも何か決めたことについては自分で進もうというリーダー的な一面も持ち合わせている」と語る。僕にも彼女の人柄を垣間見る機会はあったので、この評には納得がいく。
昨年9月、川崎のBAYCAMPでクリトリック・リスを見たとき、フロアに降りて股間にセットしたテルミンを女性客に触らせるスギム得意のセクハラ演出にxiangyuはロックオンされた。いやがっても不思議ではないし、スギムの狙いもそれだったはずだが、彼女は「おじさんの股間を触らせてもらえる機会なんてそうそうないんで、光栄でした」とニッコリ。むしろステージさばきの面で勉強になったと目を輝かせていた。
4月、コメカとパンスの二人からなるテキストユニットT.V.O.D.と僕がレギュラーを務めるネット番組『TVODの焼け跡テレビ』にxiangyuが出演してくれたときも、年長の男性ばかりの共演者を相手にまったく物怖じすることなく、予備知識のない話題にも積極的に食いついて、しっかり収穫を得て帰っていった。
こうしたエピソードからも、彼女が音楽を始めた原動力として指摘した「好奇心と度胸と行動力」がうかがえる。飾ったところがなく、誰ともオープンに接してその「現場」を楽しむことができる。こういう人は強い。野望を尋ねられて「いい作品を作りたい」「もっと沢山いろいろなところに呼んでいただけるようになりたい」と語っていたが(参照)、ケンモチと福永が引いた水路をピチピチと泳ぎ、順調に「持ち味」を伸ばしていければ、どちらも自然に実現するだろう。
4月に「ヒューマンエボリューション」を先行配信したとき、ヒトが他の生物と連続した生命体であることを言祝いだ同曲によせて、xiangyuは「いつの日か地球生息生物のオフ会が出来る日を願って。その時はチーターやイゾラドの方と乾杯がしたい」とコメントしていた。その心意気やよし。彼女が今後どんなエボリューション(進化)を遂げ、どこへ辿り着くのか、僕もできるかぎり見守ってゆきたい。
■高岡洋詞(たかおか ひろし)
フリー編集者/ライター。主なフィールドは音楽で、CDジャーナル、ミュージック・マガジン、ナタリーほかに寄稿。好きな料理は水炊き。
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