モーニング娘。楽曲で“人生”と“青春”はどのように歌われてきたか? 67thシングル発売を機に検証

「人生Blues」と「青春Night」

 それでは以上を踏まえた上で、今回の新曲ではどのような文脈で〈人生〉〈青春〉が用いられているのか見てみよう。

モーニング娘。'19『人生Blues』(Morning Musume。'19 [The Blues of Life.])(Promotion Edit)

 「人生Blues」は、前述したとおり曲名に〈人生〉というワードを用いた希少な例だ。歌詞全体を見渡すと、これもつんく♂作詞の近年の傾向である“とにかく同じセンテンスやメロディを4回繰り返す”という技法が目立つ。〈恐がるな 戸惑うな 躊躇すな 油断すな/All Right All Right All Right All Right〉や〈笑ってみ 100回さ 笑ってみ 声にして 笑ってみ 全身で 笑ってみ 毎日〉といった部分だ。

 そしてサビでは以下のように歌われる。つんく♂自身のこれまでの人生での気付きを凝縮したような言葉が連なっている。

〈人生って なんとも無理な場面から なんとかするから なんとかなる SO 諦めたら 只の人 黄昏れたいけれど…/人生って ここぞっていう日があるんだね 前もってわかりゃいいんだけど SO 後になればあの時と 気がつくもんだよね… 人生Blues〉

〈人生って どうでも良いような場面から ヒント掴むから 上に立つ 右に倣うは 簡単さ 無難なんだろうけど/人生って 待ってる時は来ないのに 無意識になれば現れる 慌てなければ 出来る事 わかっちゃいるんだけど 人生Blues〉

 ちなみにサビ頭が〈人生って~〉から始まるのは、「I WISH」での〈人生ってすばらしい〉と共通している。このような形式の曲は、今回の調査では他になかった。

モーニング娘。'19『青春Night』(Morning Musume。'19 [The Youthful Night])(Promotion Edit)

 続いて「青春Night」を見ていこう。この曲に触れた方ならすでにお気づきのことだと思うが、曲名および歌詞中に〈青春〉というワードが用いられているのと同時に、歌詞中では〈人生〉というワードも出てくる、つまり〈人生〉〈青春〉混合型の一曲となっている。

 なにしろ曲のド頭から〈私の人生 エンジョイ!!〉というフレーズで始まる。ここでも〈私の〉という接頭語が使われている。曲の中盤では〈誰がなんと言おうが 私は私の人生 エンジョイ!!〉と、さらに強調されている。

 Aメロの歌詞では、〈そこに君が居なきゃね 全部 嘘になるから〉とか〈友達の恋愛相談(ばな)って すぐ答えが出せる なのに 何やってんだろう…〉とあるので、やはりここでも〈恋愛〉が主題になっているようだ。

 そして〈青春〉が含まれている歌詞は、以下のサビの箇所だ。

〈青春Night 落ち込んでちゃ そんなの勿体無いでしょ!? 青春Night 後悔してる暇も無いの そんな事 全然 わかってる WOW WO〉

〈青春Night 幸せって まっすぐ選ぶだけ 青春Night 幸せをチョイス出来ない 私は こっから 脱出 Get away〉

 おそらく、つんく♂が一番伝えたいメッセージは〈幸せって まっすぐ選ぶだけ〉の部分だという気がする。〈人生〉〈青春〉〈恋愛〉が密接に重なり合っているという意味では、やはりこれまでの楽曲群と一貫したものがある。

 ハロプロ自体は、2015年以降の多作家時代を迎えて、必ずしもつんく♂一人の作家性では捉えられないほど拡大しているが、モーニング娘。に関しては、数曲例外はあるものの、依然としてつんく♂がメインのソングライティングを担当し続けている。今回の『人生Blues / 青春Night』もつんく♂印120%の濃厚シングルとなった。

■ピロスエ
編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主催。
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