『OZWORLD』リリースインタビュー
OZworld a.k.a. R’kumaに聞く、『高校生RAP選手権』から1stアルバム完成に至るまで
「ヒップホップという枠を取っ払って遊びたかった」
ーー今回のアルバムは、どのようなきっかけで作り始めたんですか?
OZworld:もともと全然違うビートメイカーで、今のレコード会社と出会う前から自分なりに作っていた曲が6曲くらいあるんです。ずっと「出す出す詐欺」みたいなのが3年くらい続いていて。で、これは絶対アルバムに入れたいっていう曲が出来て、そこから気持ち的にスタートした感じですね。
ーーそのスタートのきっかけになった曲は?
OZworld:2曲目の「Lucy」です。最初は2ヴァース目が書けなかったからずっと空けてたんですけど、ふとひらめいてMonyHorseくんにお願いしたんです。それと「Do it」というヨーさん(Yo-Sea)との曲。これが1年半くらい前で、いちばん古いかも。そのときからビートは新しく差し替えていて、ヨーさんも、時間が経ってるからってリリックを変えて歌い直してるんです。
ーーアルバム全体ではどんな世界観をめざしましたか。
OZworld:大きなコンセプトはないんです。今回は、たとえばトラップだけとか、そうやってジャンルを限定せず、アルバムという曲数の多さを活かして、自分が今までやってきてないことも全部やってみようと思って。その挑戦が上手くいった曲たちを入れていったんです。
ーージャンルやスタイルに縛られず、幅広くやってみようと。
OZworld:そう。「まげわすれん」っていう曲とかは「これってどういうジャンルなの?」って聞かれたら、俺も答えづらいような曲だし。今回のアルバムではヒップホップという枠を取っ払って遊びたかったんです。言っていることも、世界観も、音的にも簡単には理解できないだろうなって思うけど、そういうふうに見せたかったところもあるし、逆にここまでやれば何でもありになるんじゃないかって。俺は器用に何でもできるタイプだから、その上でそもそも意味が分からないようなキャラクターがあれば、文句を言われても気にしないでいられる。
ーーOZworldというキャラクターを使うことで、揺るぎない独自の世界観をつくりたかったと。
OZworld:そう。大半のトラックをつくったビートメイカーのHowlin’ Bearとも、「このアルバムで“あり”を作ろう」と話しながら作ってて。
ーーというと?
OZworld:自分らが今後やるのが“あり”になるという状況を、ちゃんと音でまず見せたかった。「俺はなんでもできるぜ」って口で言うだけじゃなくて、「これがOZworldの世界です」、っていうことをちゃんと音で示したかった。それを自分なりにわかりやすくまとめたものが今回のアルバムなんです。
ーーなるほど。
OZworld:「Lucy」みたいな曲もあれば、「She Iz」みたいな曲もある。それが同じアルバムに入ってるのは、ある意味「え?」だけど、俺はそれを全然やっちゃいますっていう。だから、専門店というよりデパートみたいな感じ。いろんなテナントが入ってるビルというか。でも、全体的に見てバランスはおかしくないと思ってるんです。流れで聞いてもらったときにちゃんと違和感なく聞ける曲順にしてますし。
ーー1曲目の「あさがたのミートパスタ教」は、どんな思いから書いた曲ですか?
OZworld:俺は基本的に、こんな曲を書きたいなって思って作ることはあまりないんです。ビートを聞いて1発目に出る言葉、最初の出口……それがフックになるかヴァースになるかわからないけど、最初に気持ちよく出た言葉から作っていくんです。「あさがた」は、〈I luv ma brothers〉っていうフレーズが最初に出てきてそこから広げていきました。で、作っていく途中から、これがアルバムの1曲目っぽいなと思って。MVの世界観を想像しながら書くことも多いんですけど、とりあえず仲間がいるイメージや自分のバックボーンとかを自分なりに上手くまとめたつもりです。1曲目になるから自己紹介文というか、ここから始まるOZworldの世界観を少しだけでもわかってもらおうっていうイメージで作った曲ですね。
ーー「あさがたのミートパスタ教」というタイトルは、どこから思いついたんですか?
OZworld:このタイトルにはちょっと皮肉も込めているんです。この曲では、超スーパー自由でありたい、っていうことを言いたくて。「あさがたのミートパスタ」までだったらめっちゃピースな言葉だし、どう考えても悪いイメージは広がらないと思うんです。でも「教」をつけるだけで、そこに宗教観が生まれる。日本人は宗教って聞くと怖がったりするじゃないですか。
ーー不安がったり、まがまがしいものと考えがちだし、何かを強制されたり、支配されるようなイメージもあります。そういうことに対する生きづらさを皮肉めいて歌ってるということですか?
OZworld:そうです。そもそも「あさがたのミートパスタ教」という名前には意味がまったくないんです。でも、「意味がないことにも意味がある」「意味はないのに意味がある」っていう意図も込めていたりする。
ーーそもそもミートパスタは好きですか?
OZworld:ミートパスタは好きです。でも朝から食べたことは2回くらいしかない。そのうちの1回はAK-69さんの日本武道館ライブに出た日の朝だったんですけど、「朝からミートパスタなんて食べられるもんじゃない」と思ったから(笑)。そういうところもウケるなと思って、このタイトルをつけたところもあるんです。
ーーちなみに、パスタは何味が好きですか?
OZworld:カルボナーラです(笑)。ミートパスタはいちばん選ばない(笑)。っていうくらい自由だよ、っていうことなんです。
ーーラスト曲「NINOKUNI feat. 唾奇」は、ゲームや映画の『ニノ国』からインスパイアされて作ったんですか?
OZworld:唾奇さんがそのゲームをやってて。唾奇さんも世代が近いといえば近いし、一緒に沖縄のシーンを作ってる世代なので、ここから二ノ国をつくりあげるみたいな。世界を救おうっていうレベルではないけど、でも世界を救うにはまず俺たちが変わらないといけないと無理でしょ? 隣を変えないと無理でしょ? っていう感じ。そうやって俺たちが生きやすい世界をちゃんと作っていこう、という曲です。