アンダーソン・パーク、アリ・レノックス……高橋芳朗が選ぶR&B注目アルバム4選
今回もR&Bの注目アルバムを4作。
まずは前作『Oxnard』からわずか5カ月という短いインターバルでのリリースとなったアンダーソン・パークのニューアルバム『Ventura』を。『Oxnard』と並行して制作を進めていたという今回の新作は、2014年のデビューアルバム『Venice』から『Malibu』を経て『Oxnard』へと続いた「西海岸ビーチシリーズ」の完結編。全米チャートではキャリア初のトップテン入りを果たすなど大団円を飾るにふさわしい好セールスを記録しているが、内容的にも現時点でのキャリア最高傑作といえる出来。NBA選手のレブロン・ジェームズにリスペクトを捧げたエンパワーメントソング「King James」やブランディをフィーチャーした「Jet Black」といった得意のブギーファンク路線の安定感もさることながら、スモーキー・ロビンソンをゲストに迎えたスウィートミディアム「Make It Better」から、The Temptationsを気取ったネイト・ドッグとの擬似共演「What Can We Do?」まで全編を満たすこれまでになく濃密なソウル臭にぐっとくる。大胆な転調にしびれるレイラ・ハサウェイとのコラボ「Reachin' 2 Much」にも顕著だが、的確なゲストの人選がまたアルバムの完成度を高めているところがある。
ジェニファー・ロペスが主演を務める映画『Hustlers』への出演が決定するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのリゾが満を持してのメジャーデビューアルバム『Cuz I Love You』をリリース(全米チャートでは初登場6位をマークしている)。ど迫力のファンク「Water Me」や80'sディスコ調の「Juice」など、一連のリードシングルで打ち出されていたファンキーディーバ的なイメージで臨むとややポップに響くかもしれないが、ボディポジティブやブラックエクセレンスの最良の体現者といえる彼女の持ち味はなんら損なわれていない。ミッシー・エリオットをフィーチャーした「Tempo」のようなクラブバンガーも良いが、豪快でいてその実チャーミングなリゾの本領は案外「Cuz I Love You」や「Heaven Help Me」といったゴスペルタッチの楽曲で発揮されている印象。彼女をいち早く見出したプリンスの遺伝子=ミネアポリスファンクの影響も随所で聴き取ることができる。