V系バンドが他ジャンルフェスで残した爪痕 lynch.『ROCK IN JAPAN FES』出演への期待

 そうではないことを証明する事例を挙げよう。『ニコニコ超会議』である。過去にはアルルカン、ペンタゴンといったいわゆるV系らしい音楽性の若手バンドが多々出演しているのだが、どのバンドも大盛況。ライブの模様は生中継され、ニコニコ動画上でコメントが付くのだが、最近ではアルルカン出演時には最初はアウェーだったコメント欄が、みるみる彼らを称賛する声に変わっていった。彼らは自分達のノリを強制せず、「よくわからないだろ、適当に真似してろ!」と自由に楽しむよう観客に投げつつ、思わず身体を動かしたくなるような楽曲を畳みかけた。コメント欄は「さすが盛り上げ方が違う」、という文字で溢れた。日頃、いかに自分達を知らない観客を楽しませることが出来るかを考え続けている彼らが生むエンタメ性が、会場にいた観客だけでなく画面越しに見ていた視聴者すらも引き込んだに違いない。

 V系文化が他ジャンルイベントでも楽しまれつつある最中、満を持してlynch.が『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の舞台へ上がる。過去には『COUNTDOWN JAPAN』、『A.V.E.S.T』といったイベントで音楽ファンの心を完全に掌握。ライブが終わる頃にはフロア全体から怒号にも似た大歓声を浴びるなど注目度を上げ、出演する度にTwitterでトレンド入りを果たしてきた。

 MUCC、the GazettEに引けを取らない演奏力、コアなファンすら唸らせるヘヴィサウンド。さらに、初見の観客を惹きつけるキャッチーなメロディセンスと自然と身体が動かされてしまう明瞭なライブパフォーマンス。lynch.は、過去に様々なV系バンドが他ジャンルイベントで受け入れられてきた全ての要素を兼ね備えていると言えるだろう。

 この日の彼らのパフォーマンスを観て他のV系バンドにも興味が湧いた、反対にlynch.を観に来たけど他のバンドもかっこよかったと、いった声が溢れるのではないだろうか。

 徐々に開きつつある、V系というジャンルを囲う壁。その風穴を大きく広げ、音楽ファンが自由に行き交う道を切り開くのはlynch.なのかもしれない。

■タンタンメン
自身の活動から得た経験を元に音楽記事を執筆する元バンドマンのフリーライター
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