森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.149

阿部真央、鈴木このみ、関取花、眉村ちあき、藤川千愛……声/キャラ/楽曲のバランスに注目

眉村ちあき『めじゃめじゃもんじゃ』(通常盤)

 ほめること、ほめられることの大切さをエレクトロニカとレゲエが混ざったトラックとともに描き出す「ほめられてる!」、1980年代ジャパニーズニューウェイブ直系の「奇跡・神の子・天才犬!」、オルタナティブなギターサウンド、童謡的なメロディ、オペラみたいなコーラスなどが混ざり合った「Queeeeeeeeeen」、ローファイかつガレージなトラックを軸にしたラップナンバー「ヘチマで体洗ってる」など16曲を収めた眉村ちあきのメジャーデビュー盤『めじゃめじゃもんじゃ』。特異なキャラクターと奇天烈なライブパフォーマンスによって注目を集めている眉村ちあきだが、その本質はトラックメイカー/ソングライターとしての圧倒的な創造性。既存のフォーマットから軽々と飛び出しながら、どこまでもポップに響く彼女の楽曲は、ジャンルを超え、幅広い層のリスナーに浸透していくはずだ。

眉村ちあき「大丈夫」MV

藤川千愛『ライカ』(通常盤)

 演歌歌手の祖父を持ち、マーティ・フリードマンに歌唱力を絶賛された元・まねきケチャの藤川千愛は、1stフルアルバム『ライカ』でシンガーとしての確かな資質を明確に示した。恋人との終わりを予感しながら、“どんな状況になっても笑う”と決めている女の子の気持ちを歌った「ライカ」、現状や未来に対する自分の甘えをリリカルに綴った「夢なんかじゃ飯は喰えないと誰かのせいにして」。2000年代J-ROCKをベースにしたサウンドとともに映し出される葛藤、悩み、そして、この先に対する僅かな希望を彼女は、正確なピッチと生々しい感情表現によって、ストレートに体現している。基本的な歌の上手さはもちろん、すべてのフレーズを一瞬で聴き手に届けるセンスこそが彼女の魅力だろう。

ライカ/藤川千愛 【Official Music Video】

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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