金子厚武の「アーティストの可能性を広げるサポートミュージシャン」

吉澤嘉代子、佐藤千亜妃、琴音……女性SSW支えるサポート陣から見える現在の音楽シーン

ORIGINAL LOVE/Yogee New Waves

 アルバムに関して言えば、ORIGINAL LOVE『bless You!』と、Yogee New Waves『BLUEHARLEM』から見える、“cero以降”の時代性が面白かった。ORIGINAL LOVEは、小松シゲル(NONA REEVES)、村田シゲ(口ロロ)、木暮晋也(HICKSVILLE)、冨田謙、真城めぐみ(HICKSVILLE)という現在のサポート陣と、佐野康夫、小松秀行、村田陽一という往年のメンバーを軸に、一発録りを多用して生演奏の熱量を閉じ込め、さらには、長岡亮介(ペトロールズ)や渡辺香津美といったギタリストも華を添えていたが、ここにビブラフォンとコンガで参加したのが、ceroのサポートも務める角銅真実。ORIGINAL LOVEは近年主催している『Love Jam』などでceroと共演し、親交を深めていたので、そこでまかれた種がここで花開き、世代を繋いだと言っていいだろう。

 また、Yogee New Wavesの『BLUEHARLEM』は、昨年のツアーにも参加していたパーカッションの松井泉が加わり、グルーヴ面の向上に大きく貢献しているが、同じく松井がサポートで参加するYOUR SONG IS GOODはカクバリズムにおけるceroの大先輩。ceroといえば、2月19日に行われた『闘魂2019』において、フィッシュマンズとの共演を果たしたが、サポートメンバーを交えて、音世界をさらに広げて行くという意味では、Yogee New Wavesの今後にも大きく期待したい。いずれは『闘魂』への出演もあり得るかも。

琴音

琴音『明日へ』(通常盤)

 最後にもう一人、今後が楽しみな女性シンガーソングライターとして、琴音の名前を挙げておきたい。現役の女子高生で、『今夜、誕生!音楽チャンプ』(テレビ朝日系)でグランドチャンプを獲得と、これまでそのプロフィールが一人歩きしている側面もあったように思うが、3月に発表されたメジャーからの1stEP『明日へ』は、アレンジャーに河野圭や石崎光、リズム隊に玉田豊夢と山口寛雄を迎えるなどして、シンガーとして、そしてソングライターとしての魅力をはっきりと印象付けるものだった。

 さらに注目したいのがライブでのサポートメンバーで、岡田拓郎(元・森は生きている)をバンマスに、神谷洵平(赤い靴)、谷口雄(元・森は生きている)、Shigekuni(DadaD)らが集結。岡田はかねてよりはっぴいえんどを影響源に挙げていたが、かつてのはっぴいえんどのメンバーのように、岡田が女性シンガーソングライターのバックを務めるというのは、日本のポップス史における歴史の連なりを感じさせる。残念ながら、僕は3~4月に行われたツアーは見に行けなかったのだが、すでに11月からの2ndツアーが発表されているので、この日のライブ自体はもちろん、今後は琴音と岡田の創作面におけるコラボレーションも楽しみだ。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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