シングル『Ahead Ahead』インタビュー
雨のパレードが語る、“第二章の始まり” 「新しい刺激を貪欲に取り込んでいきたい」
自分たちの音に新しい刺激を貪欲に取り込んでいきたい(福永浩平)
――今回のシングルにはリミックスも収録されていますよね。Neetz、小林うてな、Dos Monosというヒップホップやエレクトロニックのシーンの人たちが、いわばコラボレーションのような形で曲を再構築している。これも大きな意思表示になっていると思うんですけれど、これはどういうアイデアから?
福永:今までリミックスをお願いしてこなかったのは、曲数もあったんで入れる必要はなかったっていうのもデカいし、あまりそういう選択肢を持ち合わせていなかったんですね。けれど、去年からディレクターが変わって、その人のアイデアで「リミックスとか入れてみたらどう?」って言われて。それで去年に『Reason of Black Color』の7インチシングル盤を出したときに、仲良くしてるMONJOE(杉本亘/DATS)に頼んで。そこからリミックスをやろうということが始まったんです。
――今回のメンツはどうやって決まったんでしょう?
福永:最初に「誰かいないか」と言われたときに、僕は小林うてなさんが大好きで。親交もあるんですけど、ライブを観た時に衝撃的で、音源の何十倍もいいなと思って。共通の友人の結婚式の二次会でお願いして、快く受けてくださいました。で、荘子itとも親交があるんですよ。MONJOE界隈で遊んでいた相手なんで。それでDos Monosにお願いしたら最高のやつを作ってくれました。Neetzさんは正直まったく面識がなかったんですけど、僕もKANDYTOWNはよく聴いていて、レコード会社が一緒ということでディレクターが選択肢で挙げてくれました。それでこの3人になった感じです。
――いい並びですよね。リミックスが届いてどうでしたか?
福永:いやあ、もうめっちゃ楽しいですね(笑)。自分たち以外の人の解釈で自分たちの曲をアレンジしてもらうこと自体もそうだし、どれもカラーが違っているのも楽しい。最初に小林うてなさんのリミックスが届いたんですけど、Instagramのメッセージで「思いっきりやってください」って伝えたら「あ、ごめん、ポップな感じにしちゃった!」って言われて。それで聴いたら、ちょうどいい感じだった。で、次に荘子itのが届いたんですけれど、彼はもう思いっきりやってくれまして。Dos Monosの曲にしてくれましたね。
大澤:ほんと、Dos Monosの新曲みたい(笑)。
福永:めちゃくちゃうれしかったです。
――ラップが入ってくるのがまた新鮮ですよね。
福永:新鮮でしたね。それも心地よかったです。自分たちの曲がラップにハマるトラックになってることが嬉しいというのもあったし。
――タイミングとしてはDos Monosがアルバムの『Dos City』をリリースして、それがめちゃくちゃ注目を集めているわけですけれども。
福永:聴きました。素晴らしいと思います。僕はMONJOEと荘子itともよく飲んでいたんですけど、まったく知らなかった(笑)。今後も何かできたら面白いですね。
――Neetzのリミックスはどうでしたか?
福永:Neetzさんもうれしかったですね。ありがとうございます! って感じです。
山﨑:Neetzさんのリミックスはオーソドックスなヒップホップの作り方で再解釈されたような印象を受けていて。もともとの音源の楽器たちを分解して組み立てて、ビートを付けてという風にされていたんですね。三者三様のトラックで、みなさん全部格好よかったです。
――福永さんって、去年あたりからケンドリック・ラマーとかSZAとか、刺激を受けるアーティストに今のヒップホップのアーティストが挙げていたりするじゃないですか。それだけじゃなく、ここ最近はラップと歌がシームレスになっているし、バンドとトラックメイカーとラッパーが一緒にやる例も増えている。そういう海外の動きに刺激を受けたんじゃないかというのは、今回のリミックスに至る一つの伏線だと思うんですけれど。
福永:そうかもしれないですね。
――そのあたりの感覚はどうですか? 今回の『Ahead Ahead』だけでなく、今の音楽シーンのどういうところに刺激を受けているか。
福永:当然、時代の流れみたいものは大きくありますし、僕は新譜が好きなので。インディR&Bが流行りはじめた時も新しいアーティストをいっぱい聴いて刺激を受けたし、SZAやそのあたりが出てきた時も刺激を受けたので。常に自分たちの音にそういう新しい刺激を貪欲に取り込んでいきたいという姿勢はありますね。これからアルバムを作っていくときにも、それはもしかしたら反映されてくるかもしれないので。可能性のある人がいれば一緒に何かできれば嬉しいと思います。
――ということは、今回はシングルですけれど、アルバムに向けて、今のバンドの第二章のターム、新しいフォーマットの雨のパレードの新曲もどんどん育ちつつある感じでしょうか。
福永:実はこれからですね。蔦谷さんと一緒にやった曲は数曲あるんですけど、現段階でメンバー3人で新たにゼロから作ったものがカップリングの「/eɔː/」っていう曲ぐらいで。あとはメンバー4人の時に作っていたモチーフがあって、それをDAW上で構成し直していくことを考えています。それはすごく楽しみですね。いろんな音も増やせるし、いろんなアプローチも考え付くだろうなって。
――「/eɔː/」に関しては、3人になって作りはじめた?
福永:そうですね。これに関しては蔦谷さんもまったく関係していないです。でも蔦谷さんと作業したことによって学べたものがすごく活かせたと思うし、かつ、自分たちの世界観を表現できたんじゃないかなと思っていますね。「Ahead Ahead」をプラスの方に踏み込んだ曲だとしたら、マイナスの方にも踏み込めるようになったというか。そういう気持ちがありますね。
――なるほど。いろんな意味で、自分たちの武器が増えている。
福永:そうですね。正直、ライブも今まで同期を使わず手弾きでやってたので、流せていなかった音も実は沢山あったんですよ。現状の機材では実現できていなかったことも、これから新しい聴こえ方でやれるようになっているんです。ライブのクオリティもかなり上がるんじゃないかと思います。
――ちなみに、ここ最近で刺激を受けている新譜はどういうものがありますか?
福永:僕個人で言うと、HVOBっていうオーストラリアのエレクトロユニットがいて、彼らが最近出した『Rocco』というアルバムがめちゃくちゃいいんですよ。あとは、Four TetがKH名義で出した「Only Human」という曲がすごくよかった。あとはNick Murphy――前にChet Fakerという名義でやってた人なんですけれど、彼の新曲もすごくよかったです。あとはThe Japanese Houseのアルバムもよかったし、バンドで言うとLANYの新譜もよかったですね。
――そういう新譜を「これいいよ」ってメンバー同士で共有してたりもします?
大澤:よくしてます。
山﨑:スタジオのセッティングやバラシの時に浩平くんが気に入ってる曲を流したり、LINEでも情報共有をしたり、いろいろしてますね。
福永:メンバーだけじゃなくて、たとえばHVOBに関しては去年の夏くらいにMONJOEが教えてくれたし。そういうのもあります。
――新しい刺激を活かして、やってみたいことも沢山あったりしますか?
福永:僕としては、アルバムに向けて作っていた曲たちに対していろんなアプローチを当ててみたいし、それが楽しみですね。たとえば具体的なアーティスト名であげると、たとえばHVOBの新しいアルバムに「panama」っていう曲があるんですけれど、途中で声をバツっと切って、それを繰り返しているセクションがあったりして、それがすごく新鮮なんですよね。それも今の状況だと挑戦できる中のひとつのアプローチだし。やってみたいことはいろいろありますね。
(取材・文=柴那典/写真=林直幸)
■リリース情報
『Ahead Ahead』
発売:4月24日(水)
初回限定盤(CD+DVD) ¥2,400(税抜)
通常盤(CD)¥1,200(税抜)
<CD>(初回限定盤/通常盤)共通:
1. Ahead Ahead
2. /eɔː/
3. Hwyl [Remixed by Neetz]
4. Reason of Black Color [Remixed by Utena Kobayashi]
5. Hometown feat. TABU ZOMBIE (from SOIL&”PIMP”SESSIONS) [Remixed by 荘子it feat. Dos Monos]
【初回限定盤付属 DVD】
『ame_no_parade Oneman Tour 2018 “COLORS” Live at TOKYO – HIBIYA KOUEN DAI-ONGAKUDOU 2018.4.21』
1.You & I
2.Dive
3.Horizon
4.Tokyo
5.new place
6.Petrichor
7.Shoes
8.(soda)
9.H.Apartment
10.You
11.Reason of Black Color
12.Hwyl
13.Hometown feat. TABU ZOMBIE (from SOIL&“PIMP”SESSIONS)
14.ice feat. TABU ZOMBIE (from SOIL&“PIMP”SESSIONS)
15.GOLD
16.Change your mind
17.epoch
18.Count me out
19.MARCH
20.What’s your name?
iTunes Storeほか主要配信サイト、Apple Music、Spotifyほか定額制聴き放題サービスでも4月24日(水)より配信開始
配信はこちら
※Ahead Aheadのみ、iTunes Storeほか主要配信サイト、Apple Music、Spotifyほか定額制聴き放題サービスで4月17日(水)より先行配信開始
■ライブ情報
東京LIQUIDROOMリリース記念ライブ
『ame_no_parade RELEASE PARTY “Ahead Ahead”』
4月24日(水)東京・LIQUIDROOM
Open 18:15/Start 19:00
料金:4,000円(税込・ドリンクチャージ別)
※未就学児入場不可
一般発売:3月30日(土)10:00~
問い合わせ:LIQUIDROOM 03-5464-0800
■イベント情報
『Taihu Midi Festival』
日時:5月2日(木)~4日(土) 各日13時~23時
会場:中国・蘇州 Camp Midi Taihu Lake
ステージ数:4以上(2018年は各日約20,000を人動員)
(雨のパレードは、 5月3日(金)18:00~@Qing Stageにて出演)
※ライブの模様はYouku, Yi Live, Douyu等、複数の中国WEBプラットフォームにてストリーム配信予定
その他、2019 Taihu Midi Festival出演予定アーティスト:
Star Club(日本)、Paledush(日本)、No Party for Cao Dong(台湾)、Sheng Xiang Band(台湾)、Eggplant Egg(台湾)、Carsick Cars(中国)、Re-TROS(中国)、Nine Treasures(モンゴル)and more。
主催者: Suzhou Midi Culture Art. Co. Ltd., a branch of Beijing Midi Performance Co. Ltd.
■関連リンク
雨のパレードオフィシャルサイト