the GazettEはファンを良い意味で裏切り続ける ライブハウスツアー最終日に見たバンドの本質

the GazettE、ライブハウスツアー最終日

 「かかってこい!!」戒のオフマイクの叫びで始まったアンコール。楽器隊4人だけによる「GO TO HELL」だ。センターマイクで挑発的にシャウトするREITAに、全力の掛け声で応戦するオーディエンス。またその声を全身で受け止めながら、緩急を付けたアンサンブルで魅了していく4人…… そんな絶妙な関係性がせめぎ合っていく空間は、先ほどまでのカオスティックな様相とは打って変わってピースフルである。

 ちょっと奇妙で妖気なダンスチューン「SWALLOWTAIL ON THE DEATH VALLEY」のあと、「この曲を平成最後のライブに送るぜー!」と紹介されたのは、“大日本異端芸者”時代のナンバー「[DIS]」。〈「平成」時代事態変えろ 〉の“犯行声明文”が何度も何度も会場にこだました。

「まだまだ暴れ足りねぇんじゃねぇのかよ!! ラストォーー!! 関東ォォォォーーッ!! ……土下座ァ(小声)」

 今日はツアーファイナルだ、これがないと終われないと言わんばかりに予定外のダブルアンコール「関東土下座組合」。これでもかというほど振り乱れるヘドバンの嵐と人波を泳ぐダイバーで埋め尽くされたフロアを前に、ステージのメンバーも負けじと頭を振る。轟音と狂乱にまみれながらボルテージは最高潮に達し、ライブは終演へ……と思ったとき、RUKIが再び口開く。

「ラスト、春雪の、」

 タイトルを言い終える前に、悲鳴のように湧き上がった歓声。インディーズ時代のアルバム未収録曲であり、まさに隠れざる名曲「春雪の頃」だ。狂喜乱舞するオーディエンスを見ながら、したり顔で演奏するメンバーたちが印象的だった。こうして『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛』は終幕した。次なる“第4層目”は、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、アジアを回る海外ツアー『WORLD TOUR 19 THE NINTH PHASE #04 -99.999-』だ。「何倍もデカくなって帰ってくるんで」……RUKIはMCでそう言っていた。今度、彼らを観られるのはいつになるのだろう? 会場に居る誰もがそう思っていた時、突如降りてきたスクリーンにて、とある告知がされた。

 『LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL「第九」』2019年9月23日、横浜アリーナ――。

 ベートーヴェンの『交響曲第9番』=“第九”が響く中、長きに渡るアルバム『NINTH』のツアーファイナルの発表だった。会場がまさに歓喜の歌に包まれた光景。思い返せば今から約11年前の2008年11月15日、新宿ステーションスクエアにてシークレットのゲリラライブを行ったときも『第九』が鳴り響いていた。その荘厳な響きはthe GazettEに似合う。

 『NINTH』はこれまでのthe GazettEの集大成ともいうべきアルバムだ。その世界観を体現するようにツアーを重ねてきた。今回の『PHASE#03』は、この日のRUKIの言葉を借りれば「自分たちが成長してきた姿、歩んできた道を見せていきたい」という想いで、バンドを始めた頃の会場を選んだという。「ホールでもライブハウスでも、どちらも似合うバンドでありたい――」口にすることは容易であるが、それをきちんと証明したツアーであった。アリーナであっても、海外であっても……、この先どこに行ってもバンドの本質は変わらない、そう確信した。

「まずは俺たちとお前らが、この時間を共有できていることに感謝」

 いつもライブで発せられるRUKIのこの言葉は、ただの決まり文句ではないのだ。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

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