シーアはなぜポップミュージックに求められ続けるのか 楽曲提供、コラボなどの歩みを辿る
シーアの直近の活動としてはディプロ(Diplo)、ラビリンス(Labrinth)とのユニット・LSDがある。
ここでもなれそめはシーアとのコラボレーションから。ラビリンスは映画『ワンダーウーマン』のテーマソング、ディプロも映画『ハンガー・ゲーム2』サントラに提供されたシーアの『Elastic Heart』でザ・ウィークエンドとともにフィーチャーされていた。
メジャー・レイザーやシルク・シティーを手がけるクラブシーンの大立物・ディプロと、シンガー、ラッパー、プロデューサーなど複数の顔をもつラビリンスとのスーパーグループは3人の頭文字を取ってLSDとされているが、音のほうもカラフルで浮遊感のあるサイケポップ。4月12日には1stアルバムのリリースも決定している。
グレッグ・カースティンとのタッグや多くの楽曲提供、フィーチャリングを経て、シーアが選んだ次なる創造の場、LSD。3人それぞれがプロデューサーを兼ねるユニットは、分業制が極まった先にある2020年代のポップミュージックを占う上で重要な作品になりそうだ。
ステージではウィッグを着用するシーア。アイコンとして消費されることを拒否しつつ、たぐいまれな作曲能力で現行シーンを支えてきたシーアは、創造性と名声の危うい均衡をウィッグで覆うことによってかろうじて保っているように見える。
シャンデリアのように揺らめくシーアの歌に引きつけられるのは、その光が照射するのが同じ目線で生きる私たち自身の姿だからだ。その事実こそが、シーアがポップミュージックの中心線上で切実に求められる理由なのかもしれない。
■石河コウヘイ
東京都出身のエンタメ系ライター。ジャンルの壁を苦にしない雑色耳と旺盛な好奇心で都内各所に出没中。