佐藤詩織、美術大学卒業は欅坂46の追い風に? メンバーの未来を“デザイン”する可能性

 “アート”という観点でいえば、佐藤自身が芸術作品ともいえる存在だろう。佐藤はダンスの側面から、グループを牽引するメンバーのひとり。3rdシングル曲「二人セゾン」では、自身初のフロントメンバーに抜擢され、クラシックバレエの動きを取り入れた、しなやかなターンなどを披露した。また、前作シングル曲「アンビバレント」での音楽番組出演時にも、サビ後半部で魅せる鋭いハイキックがたびたび話題となった。

 最近では、パフォーマンスにおける表情の作り込みでも一目置かれている。最新シングル曲「黒い羊」では、メンバー全員が鋭い眼差しで平手友梨奈を指差すシーンも。佐藤は同楽曲で、自身2度目のフロントメンバーとして、冷徹さに徹した表情を披露している。思わず見惚れるようなダンスを踏まえ、ひとつひとつの所作で“静”と“動”のバランス、さらには観ている者の感情を自在に操れる稀有なメンバーだ。

 現在発売中の『BRODY 2019年4月号』(白夜書房)では、メンバーの鈴本美愉と佐藤が対談。卒業後にダンス技術を必要とされる可能性が低いにも関わらず、なぜそこまで没頭できるのかを尋ねられた際、「まず欅坂46を広めたい、欅坂46が多くの人に愛されたいということが頭にある」「先のことよりも今が一番なので」と宣言していた。

 欅坂46のメンバーとして、叶えるべき目標やメッセージを伝えたい相手が明確だからこそ、そのパフォーマンスも一層に熱が帯びるのだろう。これは、前述したアートディレクター・小杉幸一も同様に指摘するところだ。今の佐藤は、多くの人々の感情を“デザイン”する存在として、語りつくせない可能性を秘めている。実際に『デザインノート No.80』では、「アイドルも人を笑顔にしたり、希望を届けたり、人の生活をデザインする職業なのかもしれない」と語る一幕もあった。今回の大学修了は、彼女が“デザイン”の道を探求する新たなスタートになるのだろう。彼女がいつか“欅坂46”という作品を完成させる日まで、その頼れる姿を熱く目に焼き付けたい。

(文=青木皓太)

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