日向坂46の笑顔に隠された葛藤とは? 佐々木美玲、井口眞緒ら『キュン』特典映像から感じたこと

日向坂46 『けやき坂46ストーリー ~ひなたのほうへ~「井口眞緒」』予告編

 今回の予告編の中で、YouTubeの再生回数が断トツに多いのが、伝説となっている「井口セゾン」の舞台裏を語る、井口眞緒の映像だ。井口と言えば、自他共に認めるほど歌とダンスが苦手だが、ひらがなけやき初のワンマンライブの際には、平手友梨奈のパフォーマンスが印象的な「二人セゾン」のソロダンスを任された。これがファンの間では親しみを込めて、「井口セゾン」と呼ばれている。井口は「スナック眞緒」でもわかるように明るく楽しい性格だが、一方で周りや自分をしっかりと判断できる慧眼の持ち主だからこそ思い悩む一面も持つ。そんな井口だからこそ悩みながらも努力を重ね、「二人セゾン」のソロダンスを必死に踊りきった。映像には、井口につきっきりで教える振付師のTAKAHIROや現在休業中の影山優佳らが彼女のダンスを見守る姿も収められており、「井口セゾン」がみんなの努力の結晶だというのが伝わって来る。

 また『欅って、書けない?』(テレビ東京系)のMCである土田晃之が、『アメトーーク! 』(テレビ朝日系)で欅坂をプレゼンした際に、応援したくなるメンバーとして、ひらがなけやきの井口の名前をあげ、彼女のダンスをいじりつつも「ただとにかく一生懸命」だと、センターで踊る「二人セゾン」の姿を絶賛していた。欅坂の番組以外で「井口」と「ひらがなけやき」という言葉が地上波のバラエティで流れたのは初めてに近く、土田がプレゼンした「井口セゾン」が日向坂の今の人気に繋がるきっかけの一つになったようにも思う。

日向坂46 『けやき坂46ストーリー ~ひなたのほうへ~「濱岸ひより」』予告編

 二期生の中で印象的だったのが濱岸ひよりだ。昔から習っているクラシックバレエとアイドルの両立に葛藤する姿が描かれている。普段はあまり多くを語らない濱岸だが、美しいバレエダンスを披露しながら、バレエへの思いを真剣に口にしている。3歳から今までバレエ一本に本気で打ち込んできた濱岸がアイドルを選んだのは、大きな決断だった。デビュー初期の『MARQUEE Vol.125』でも語られていたが、バレエなしでは生活できないほどバレエが好きで、小学校の卒業文集では将来「バレエの先生」になりたいと書いている。オーディション当時の濱岸は中学生だった。バレエを辞めてまでアイドルになったのは、かわいい女の子が好きで、アイドルが好きで、「その世界観と表現力が好きだから」ともう一つ自分の好きなものをひらがなけやきに見つけたからだという。ただ今回の映像では、オーディション合格当時からの揺れる想いが語られていた。予告編の最後は「辞めたい、辞めたい、辞めたい……本当は、辞めたくなんかなかった」という意味深な言葉で締められている。中学生が十数年挑んだバレエと決別し、将来の道を決断するのに、どれだけの覚悟と葛藤があったのかを考えさせられると同時に、今の濱岸への見る目が変わる映像だ。

 他にも加藤史帆の真の姿や、潮紗理菜の笑顔の理由、ひらがなけやきが覚醒したターニングポイントとなる佐々木久美の楽屋激怒事件の真相などが収められている。メンバーの誰もが悩み、苦しんだ過去があるからこそ、今の魅力的な日向坂へと繋がっているのだと改めて気付かされた。結成から約3年という長い道のりがあったからこそ、各々のメンバーにストーリーが生まれ、デビューシングルへの感動がより深まる結果となった。そんな日向坂が改めてスタートした今、より多くのファンに愛される未来が待っているはずだ。

(文=本 手)

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