ASIAN KUNG-FU GENERATION、『ホームタウン』が持つブレない熱量 ツアー序盤戦を観て

 「モータープール」、そしてタイトルチューン「ホームタウン」など、アルバムでの風通しの良さがステージでリアルにかき鳴らされていく。スコーンと会場を駆け抜けていくような伊地知潔(Dr)のドラム、メロディをタフに支え奥行きを生んでいく山田貴洋(Ba/Vo)のベースライン、華やかな広がりを描いていく喜多建介(Gt/Vo)のギター、そしてサポートキーボードのシモリョー(the chef cooks me)で、ダイナミックなアンサンブルを響かせ、また繊細なハーモニーも聴かせる。バンド内でぐっとエネルギーをぶつけ合わせるような、ステージ上の5人がいちばんこの音を楽しみ、グルーヴを味わっているようにも聞こえる。聴き手の感情や見える景色を確信犯的に反転させるキャッチーで構築的なロックサウンドも、ASIAN KUNG-FU GENERATIONというバンドが築き上げてきた形であり、20年間、ソリッドでヒリヒリとした緊張感と高い爆発力を放ちながら歩んできた。その百戦錬磨のバンドマンが“楽しむ音”は、単に無邪気なものであるはずなく、セットリストが進むといちだんとその世界に引き込む引力を増す。

 「ループ&ループ」など定番曲も交え、また『ホームタウン』収録のロックでソウルなアンセム「レインボーフラッグ」から「迷子犬と雨のビート」へと新旧の曲が呼応していくような流れもあり、この長いツアーで『ホームタウン』を軸にさまざまな物語を編んでいけるような期待感も湧いた。そしてライブで改めて、アルバム『ホームタウン』が持つブレることない“これが最高なんだ”という高い熱量に、間近でガツンと当てられた。ツアーは続く。後半はホール公演となり、また違った景色も見せてくれそうで楽しみだ。

(文=吉羽さおり/写真=Tetsuya Yamakawa)

ASIAN KUNG-FU GENERATIONオフィシャルサイト

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