つんく♂は海外からJ-POPシーンをどう見ている? ハワイ移住後の音楽との関わり方の変化

つんく♂が考える「U.S.A.」ヒットの理由

 だからこそ、DA PUMP「U.S.A.」 は刺激のみを求められた結果でも、踊れるだろう彼らがダンスの極みを目指したわけでもなく、曲全体をどう演出するか、という感覚で勝負したのが結果ヒットにつながったのだと。“つんく♂楽曲っぽい”という触れ込みからこの曲が響いていったというのも一説でしょうが、そもそもこの曲は1980年後半のユーロビートのヒット曲で、その辺は日本国内においてはavexのルーツでもあるわけです。

 そして、僕に関しては学生時代、ディスコクラシックからユーロビートに渡ってたくさんダンスミュージックを聞いたので、このあたりの音楽は体に染みついています。この25年、何千曲と作ってきたシャ乱Q~ハロー!プロジェクトなので、そんな曲ネタを頭の中でひっぱり出しつつ、どこかしらそんな雰囲気の曲もたくさん作ってきたと思います。同時にそういうこと自体を楽しんでいたので、当然と言えば当然のサウンドです。

 DA PUMPは、周知のとおり、ライジングプロダクションのダンスボーカルグループ。ライジングといえば、荻野目洋子さんがその代表です。年齢こそ僕と同じですが、大先輩の彼女も大ヒット曲の代表作といえばカバー曲の「ダンシング・ヒーロー」でした。ライジングの名プロデューサー・平哲夫さんは、ここぞのタイミングでのカバー曲の選び方、アレンジ、日本語化等、全てが素晴らしく完璧。安室奈美恵 with SUPER MONKEY'Sの「TRY ME~私を信じて~」にしても、今回の「U.S.A.」にしても、老若男女が入り込める余地を残した上での時代ごとのオシャレのあり方、溶け込み方が結果的な大ヒットにつながってると感じます。僕流の分析において「U.S.A.」は、売れるべくして売れるように仕上がっているサウンドであり、かつ、平さんの敏腕のたわものなのです。

嶋大輔「男の勲章」、カラオケランキング浮上への驚き

 ところで、2018年のJ-POPシーンにおいて、DA PUMP「U.S.A.」 や米津玄師「Lemon」が人気なのは、ハワイにいても情報が入ってくるので、もちろん知っていました。それらの楽曲はカラオケランキングでも根強く、“本当に世間に染み込んだんだなぁ”と納得するところなのですが、しかし、急にあるとき「男の勲章」(嶋大輔)がずっとランクインをしていて、“あれ? これはなんだろう?”と。誰かがカバーしたのなら、その歌手名になっているはずだけど、ランキングしているのはあくまでも嶋大輔という名義。

 何かのバラエティ番組で嶋大輔さんをいじったり、昔の『ひょうきんベストテン』(バラエティ番組『オレたちひょうきん族』の1コーナーでやっていた『ザ・ベストテン』のパロディ)的な何かで曲をいじったのをきっかけにジリジリ来たのかなぁとググってみたら、ドラマ『今日から俺は!!』の主題歌で、若者俳優らが「男の勲章」を歌って踊っていることが判明。なるほど。しかし、その歌のバージョンを彼らの名義で販売してないというのが時代ですね。10年前なら絶対にシングルを切ってたわけですから。不思議な話です。

 ちなみに、そんなに話題になるドラマなら見なきゃと色々調べたら、僕と同じ年の福田雄一監督の作品。福田監督は『銀魂』や『勇者ヨシヒコ』など、このところ話題作を次々と手がけています。ハワイでの生活が縁で友人関係にあるのですが、そんな彼の作品だと知り、さらに納得。当然ながら、子どもらと一緒に遅ればせながらドラマを見ていることは言うまでもありません。

2019年、つんく♂が日本の音楽シーンに願うこと

 そして、2019年。YouTuber、VTuber、ライブ課金、eスポーツ……いろんな新しげな言葉が世の中に飛び交っています。が、いつの時もヒットする時は予想外なところから火がつくので、こればっかりは何が当たるかわかりません。ただ、音楽というものはいつもそこにあってほしいし、それが世の中の経済効果を生み出すべきものであれ! とつねに思っているのです。

 現在は多くのエンタメコンテンツがタダなので、それがいつまでどうなるのか。こんなことでこの先の文化の発展はあるのだろうか……などなど、そんな心配もあります。しかし、チャンスとしては、“ヒットする時は日本だけでなく世界中で”という広がりができたことは確かです。日本人のきめ細かさ、忍耐力など、世界の中でもこんな国は少ないと感じています。だからこそ僕も含めて、これからはさらに世界に向けて発信してくべきだなぁと思いますね。

(構成=久蔵千恵)

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