稲垣吾郎、“主演小説”『ロストマン ロンリーハート』連載開始 通常の逆をいく新たな読書体験に
稲垣が草なぎ剛、香取慎吾と共に、新しい地図をスタートさせて以来、彼らの作品は作り手もファンも同じ“NAKAMA”という、限りなく対等に近い関係性が強く感じられるようになった。飯田も「報告できることが起きたらツイッターでお知らせしていくようにしますね」とつぶやいており、この小説は“発信する著者と受信する読者”という一方通行の構図では収まらない連帯感を楽しむことができそうだ。
物語は、ぜひ誌面にて楽しんでいただきたいが、稲垣の中にある新開タカオとの共通点についてひとことだけ言わせてほしい。少々ネタバレになるので、まだ読まれていないという方はここでUターンを……。
新開タカオは決して清廉潔白な人ではない。完全無欠なヒーローでもない。むしろ直感的で、弱さもあり、ガシャポンが好きというどこか少年性も感じさせるわかりやすいキャラクターだ。一方、アイドル稲垣吾郎は、プライベートがミステリアスだと長年言われてきた。だが、最近の稲垣は、その素顔を惜しげもなく披露している。特に、毎月1回7.2時間の生放送『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)ではスタッフの段取りの悪さにやきもきする“イラチ”な部分を隠すことなく出していく。『星のドラゴンクエスト』とのタッグでは独特なこだわりを主張して周囲を翻弄し、TikTokではあざといほどのキュートな表情を見せている。コレクション趣味もガシャポンかワインかだけの違いと考えればかなり近い。
一般的なアイドルが若さゆえに幼さと危うさを含んだ魅力を放ち、徐々に素性の見えない大人へと成長していくのに対して、最近の稲垣は特に年齢を重ねるごとに人間味に溢れ、ほっておけない存在になっているように思う。つまり稲垣吾郎自身が、通常の逆をいく楽しさを体現しているのかもしれない。そう、まるでこの小説のように。
ますます稲垣以上に、この新しい小説の主演にふさわしい俳優はいなかったと思えてくる。そしてNAKAMA以上に、この小説を映像化まで見守ってくれる応援団もいないのではないか。そう思うと俄然、この新しい取り組みに参加する面白さが増してくる。他の誰もが実現していない、新しい何かに参加するワクワク感を、存分に味わっていきたい。
(文=佐藤結衣)