坂本真綾、ワルキューレ、May'n、中島 愛……フライングドッグ10周年記念『犬フェス!』を振り返る

 2019年2月2日、武蔵野の森 総合スポーツプラザで『フライングドッグ10周年記念LIVE−犬フェス!−』が開催された。アニメ関連の楽曲を中心に、数多くの優れた作品と個性豊かなアーティストを輩出してきた音楽レーベル・フライングドッグ。10周年を記念したこのイベントには、坂本真綾、ワルキューレ、May'n、中島 愛など豪華なアーティストが出演し、レーベルの歴史と豊かな音楽性を改めて実感できるステージが繰り広げられた。また、日本、香港、台湾、韓国の映画館でライブビューイングも行われ、アジア全域のファンがこの貴重なフェスをリアルタイムで共有した。

 開演前、スクリーンにはさまざまな年代のアニメのオープニング/エンディングの映像が映されていた。庵野秀明監督による名作アニメ『トップをねらえ!』の主題歌「アクティブ・ハート」(酒井法子)、『ラストエグザイル-銀翼のファム-』OPテーマ「Buddy」(坂本真綾)などが流れるたびに、会場からは「おお!」という歓声が上がる。フライングドッグ設立から10年、その前身となるビクターエンタテインメントのアニメ制作部から数えると約40年。アニメとアニソンの歴史を振り返った後、ついにイベントがスタート。最初に登場したのは、フライングドッグと縁の深い作曲家の田中公平。「フライングドッグ、10周年記念ライブにようこそ!」と挨拶した後、『トップをねらえ!』『サクラ大戦』など自身が関わった作品のエピソードを紹介し、「1曲やっていいかな?」とピアノの前に座り、TVアニメ『勇者王ガオガイガー』の主題歌「勇者王誕生!」を演奏。サプライズゲストの遠藤正明が「ガガガッ ガガガッ ガオガイガー!」とシャウトし、観客も大合唱で応える。

遠藤正明

 続いて登場したのはMay'n。デジタルロックチューン「Chase the world」を4人の男性ダンサーを率いてパフォーマンスし、会場の熱気を一気に引き上げる。さらにTVアニメ『マクロスF』関連の楽曲へ。「射手座☆午後九時Don’t be late」ではステージの端から端まで走り、観客のボルテージを上げる。「この曲と出会って、(作曲者の)菅野よう子さんと出会って、May'nが生まれました。たくさんの出会いをくれる、特別な曲です」というMCの後は、「ダイアモンド クレバス」。エモーショナルな歌声を高らかに響かせ、最初のクライマックスを演出してみせた。

May'n

 この後も独創的な世界観を持ったアーティストが次々と登場。ロックとエレクトロが絡み合う「SAVIOR OF SONG」(TVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』)をシャープなボーカルで描き出したナノに続いては、梶浦由記/ FictionJunction YUUKA。クラシカルなピアノと壮大なバンドサウンドのなかでオペラ歌手の笠原由里が神々しいメロディを歌い上げた「salva nos」によって、独自の雰囲気を生み出す。

笠原由里

 「私たちアーティストとレーベルの関係は、同じ地平を目指してはいるけれど、違う場所で戦っている戦友のような感じだなと思っていて。視点がズレることもあるんだけど、だからこそ視野が広がるし、そうやって音楽を作ってきたんだと思います」(梶浦)という言葉の後、シンガーのYUUKAが姿を現し、「暁の車」(TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』挿入歌)を歌い上げた。エキゾチックな旋律と緻密に構築されたサウンドは、まさに梶浦由記ワールドだ。

FictionJunction YUUKA

 続いて、マクロスシリーズ、アクエリオンシリーズを手がけてきた河森正治がプレゼンターとして登壇。「80年代はアイドルが全盛で、“どうしてアニメにアイドルがいないのか?”というところから、マクロスの歌姫が生まれた」とマクロスシリーズがはじまったきっかけを語り、最後に新居昭乃を紹介。神秘性と透明感をたたえた「VOICES」(OVA『マクロスプラス』主題歌)ボーカルが響き渡り、続いてバンドを率いての「キミヘムカウヒカリ」(TVアニメ『ゼーガペイン』OPテーマ)で会場を異空間へと導いた。

新居昭乃

 唯一無二としか言いようがないステージを繰り広げたのはALI PROJECT。軍服衣装に身を包んだ宝野アリカとドラッグクイーンのパフォーマーを中心に「亡國覚醒カタルシス」(TVアニメ『.hack//Roots』EDテーマ)「勇侠青春謳」(TVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』)をシアトリカルに表現し、独自の世界観を強く押し出す。日本刀をふりかざす宝野のステージングも刺激的だった。

ALI PROJECT

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