ブルーフェイス、YBN・コーデイ……渡辺志保が選ぶ、2019年ブレイク候補ラッパーの新譜6選

Maliibu Miitch『Bum Bitch』

 そしてもう一人、私が気になっているのが、マリブ・ミッチ。彼女のことは、去年、ニッキー・ミナージュがラジオでマリブの曲を紹介していて初めて知りました。1991年生まれ、現在はブロンクスを拠点とするマリブですが、実はなかなかの苦労人なんです。10代の時にはなんと、DMXやイヴが在籍していた、あの<Ruff Ryders>と契約していたそう。そしてその後、マリブ・アンド・ヘレーネというデュオとして<The Island Def Jam>から再デビューを果たすもうまくいかず、2018年にやっとソロラッパーとしてワーナー傘下の<Atlantic Recording>との契約を結んだそう。50セントやニッキー・ミナージュ、そしてジェイダキッスらの作品にインスパイアされてきた、と語る通り、彼女のラップはハードかつソリッド。もっと分かりやすくいうと、イケイケなスタイルです。リル・キムが1996年に放った超名曲「Crush On You」や、フォクシー・ブラウンの「Chyna White」といった、NY出身の先輩フィメールMCらの楽曲をリミックスしてYouTubeに乗せているあたり、彼女が目指す方向は明確とも言えるかもしれません。後輩ラッパーに厳しく、カーディ・Bにもネチネチと攻撃していたあのニッキー・ミナージュも認める存在として、2019年はもっと話題を振りまいてくれるかも。彼女の最新MV「Bum Bitch」はなかなかパンチの効いた仕上がりなので、ガツンと強めな作風が好きな方はぜひ観てみてください。

Maliibu Miitch - Bum Bitch (Official Music Video)
Lizzo『Juice』

 そして最後に紹介するのは、私が今年、もっとも注目しているアーティストのリゾー! テキサス生まれ、ミネアポリス育ちの彼女。シングル「Juice」はかつてのミネアポリス・サウンドを思わせるとびきりのファンクチューン。『エレンの部屋』やジミー・ファロンの『トゥナイト・ショー』など、名だたる有名TV番組でも素晴らしいパフォーマンスを披露しています。特に『エレンの部屋』では得意のフルート演奏も披露! あの『Rolling Stone』誌も「2019年にまずチェックすべし楽曲」として、この「Juice」を取り上げていました。すでに2枚のアルバムをリリースし、オーストラリアのバンドであるThe Griswoldsや、ロンドンの人気ロックバンドのBASTILLEらの楽曲にもゲストシンガーとして参加しているほどのキャリアの持ち主ですが、今年の4月にメジャーデビューアルバムとなる『Cuz I Love You』をリリースすることをアナウンスしています。あのミッシー・エリオットも参加していることも明かしており、素晴らしいガールズ・エンパワーメントたる作品になることは間違いなさそう。リゾーはカーヴィーな体型ですが、自身のボディサイズに捉われない「ボディポジティブ」のアイコンとしても知られており、また、インタビューでは「自分のセクシュアリティーもジェンダーも、一つに絞ることはできない」とも語っています。多様性を体現するアーティストとしても、彼女の作品や活動にとてもワクワクしています。

Lizzo - Juice (Official Video)

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演

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