『agehasprings Open Lab.』初の作詞ワークショップで玉井健二と田中秀典が“日本語訳詞の難しさ”語る

 田中がリアルタイムで日本語の訳詞に挑む中で、玉井は“日本語の訳詞”の難しさについて言及。玉井は例として「Let It Go」を挙げた。この楽曲の日本語訳詞となった歌詞の“ありのままで”だが、この“ありのままで”という言葉を伝えるために、元の歌詞の「Let it go」は2回必要となる。つまり日本語というのは言葉を伝えるのにすごく時間がかかる言語で、単純に原曲の歌詞を日本語訳したもの、いわゆる直訳の歌詞で成立することはぼぼ無いとのことで、作った人や歌う人の目指した世界感を、「日本語」を使って違う角度から作り直すという、実にクリエイティブな作業であると述べた。

 玉井と寺岡による作詞にまつわるトークが弾む中、わずか40分ほどで1コーラスの歌詞をほぼほぼ仕上げてしまった田中。そして、ここから実際に田中が歌いながら音のハマりを確認し、歌詞の世界観を含め微調整していくという作業に入る。特に印象的だったのは、登場人物のキャラクターをさらに具体化するために、フレーズの語尾を選定していくシーン。そのフレーズの語尾が「わ」なのか「よ」なのか「の」なのか「ぜ」なのか、それだけでキャラクターの印象が全く違ってくるとのことで、語尾の一文字に至るまで細かく設定をしていくやり取りは興味深かった。

 そして、わずか1時間で1コーラスが仕上がった「Suddenly I See」の田中秀典Open Lab. ver.は、とても1時間で書いたとは思えない程の完成度で、プロフェッショナルとしての技術力、そして田中秀典の作詞家としての凄みというものを改めて示すものとなった。また玉井曰く、元々はプロのアーティストとして歌を歌っていた田中の素晴らしさは音のハマりの良さであり、歌詞のみならず歌としても素晴らしいものになると述べた。

 作詞のプロフェッショナルである田中秀典による鮮やかな作詞術、さらには玉井健二とMC寺岡歩美(sugar me)のバラエティに富んだ語り口で、あっという間に完成した印象の強かった今回の【公開作詞ワークショップ】。しかし、この1時間の中には経験に裏打ちされた確かな技術と、確固たるメソッドが内在していることは、参加した誰もが感じたことと思う。イベント終盤には来場者の作詞・作曲にまつわる質問に対して、玉井と田中が直接回答するという充実の内容だった。

 玉井健二を筆頭に、蔦谷好位置、田中ユウスケ、田中隼人、百田留衣、飛内将大、釣俊輔など、今や日本を代表するヒットメーカーが多数在籍するagehaspringsだが、彼らが実際の現場で行っていることをエンターテインメント然としたポップな語り口で披露してくれる『agehasprings Open Lab.』は、音楽プロデュース・音楽制作という枠にとどまらず、ポップカルチャーを学べるイベントとして、また音楽の楽しさを伝えるメディアとしてその規模を拡大していくに違いない。なお、2019年の『agehasprings Open Lab.』イベントは東京開催のみならず関西エリアでも開催予定とのこと。agehaspringsのオフィシャルTwitterにて随時情報が更新されていくのでぜひチェックしてみよう。なお、リアルサウンドテックでは田中のインタビューも公開中だ。

(文=編集部/撮影=樋口隆宏(TOKYO TRAIN))

『agehasprings Open Lab.』公式HP
agehasprings公式Twitter

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