THE BACK HORN、感謝と祝福で満ちた日本武道館 結成20周年ツアーファイナルレポ

 とりわけ心に残っているのは、不穏な響きをさせながら8分の6拍子を進む「ひとり言」の狂気と嬉々としてそれを受け入れるオーディエンスの様子。人間とは? 正義とは? という問いかけが迫りくるような「悪人」から「雷電」の流れ。全国でこれをやってきたのだと誇らしげに言いながら、「神様だらけの!」「スナック!」と、他のどのバンドでもなかなか聞かないような言葉でコール&レスポンスをした「コワレモノ」。レゲエ調の「ヘッドフォンチルドレン」が醸すどこか退廃的な色気は、今の彼らが鳴らすことでより魅力的になったように思う。「美しい名前」で岡峰の鳴らす最後の一音が完全に鳴り止むまで会場中が息を呑んでステージを見つめていたこと、続く「未来」を機に山田のボーカルがもう一段階突き抜けるようになったことも印象的だった。

 MCでのメンバーのやりとりは素朴なものだったが、ふとした時に零れ落ちた言葉にはグッとくるようなものもあり、20年という歳月の重さはそんなところからも読み取ることができた。「まだまだ行こうぜ! 行けるよな!」(山田)という言葉とともにアルバム『情景泥棒』収録の「Running Away」からクライマックスへ。変わらないものを携えながらこれからも未開の地へ進んでいくのだという意志をここで改めて示すと、「グローリア」では場内が明転。それまでの演奏がバンドの歩みと経年進化っぷりを感じさせるものだったからこそ、バンドサウンドが堂々と鳴りわたるなか、THE BACK HORNという名前を掲げたバックドロップが光に曝された瞬間は感動的であった。

 そのあと、これまでライブで度々鳴らされてきた楽曲を連続で演奏し、本編が終了。アンコールには、バンド結成後初めて作った曲だという「冬のミルク」、昨年9月に配信リリースされた現時点での最新曲「ハナレバナレ」、そして「無限の荒野」が選ばれた。ライブ中、山田が「人としてちゃんと生きていこうっていう力を(THE BACK HORNから)もらってる気がします」と話していたが、きっとそう思っているのはメンバーだけではないだろう。「また生きて会おうぜ!」。ライブハウスでやっていたのと同じように約束を結んでから、私たちはそれぞれの日々に帰っていった。

(写真=AZUSA TAKADA)

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

THE BACK HORN オフィシャルサイト

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