サイプレス上野が語る、仲間と作ったシーンとこれからに向かう姿勢「気持ちは青春時代のそのまま」

サイプレス上野、青春との向き合い方

 いつまでも青春時代を謳歌していたいけれど、そういうわけにもいかない……そんなピーターパン症候群の大人たちに贈るエモさ全開の作品、サイプレス上野とロベルト吉野のメジャー初フルアルバム『ドリーム銀座』。新曲にはDJ PMX、MurderFaktry、Yasterise、STUTS、mabanua、BASI(韻シスト)、HUNGER(GAGLE)、LIBRO、ZOT on the WAVE、DJ MISTA SHARといった豪華ゲストを迎え、前作『大海賊』に収録の「メリゴ feat. SKY-HI」「上サイン」「ホラガイHOOK」も再収録。今回リアルサウンドではサイプレス上野にインタビュー。地元仲間による身内ノリのような楽しさもありながら、同時にノスタルジックな面も持ち合わせたこのアルバムで、果たしてサイプレス上野は、青春時代に決着をつけることができたのか?(榑林史章)

傾き続けないと生きていけない 

サイプレス上野

ーーメジャーでは初となるフルアルバムですが、どんな作品になりましたか?

サイプレス上野:自分たちらしいというか、好きにやらせてもらえたなという感じですね。全体には、けっこうライブを意識したかな。たとえば小箱のヒップホップのクラブだとしたら「NO LIMIT」が盛り上がるだろうし、フェスみたいな広い会場なら「青春の決着」が映えるだろうなとか。曲ごとに、そういったイメージを持ちながら制作しました。

ーー「Yokohama La La La」、「PRINCE OF YOKOHAMA 2222」など、地元・横浜レペゼンの楽曲は欠かせない。毎作の恒例で、ネタは尽きないものですか?

サイプレス上野:やっぱり内容が似通ってしまうので、アップデートを心がけています。それに「PRINCE OF YOKOHAMA 2222」は未来の話で、もはやSFみたいな感じだし。

ーーでもどうして2222年に?

サイプレス上野:言いやすかったので(笑)。

ーーネットで検索したら「2222」はエンジェルナンバーっていうのが出てきて。何か意味があるのかな? と。

サイプレス上野:へぇ〜。そうなんですか。いや、なんか全然たまたまですよ。でも「エンジェルナンバーなので!」ってことにしておきます(笑)。

ーー「2018⇄2222」は爆笑でした。

サイプレス上野:くだらないスキットですみません(笑)。

ーーお母さんと電話で話してるんですよね。

サイプレス上野:本物の母ちゃんです。何も言わずに電話して、会話をそのまま録音して使っていて。いつもあんな感じです。「え!」「え!」って言ってるのもそのままで、「え!」が多いから、それで「え!」を抜いて使おうってことになって。CDのジャケットを描いてもらうのは、今までもやってもらってたんですけど、音源でアルバムに出てくるのは初めてです。

ーーいつも味のある絵で。

サイプレス上野:昔から母ちゃんの絵を見てたんで、最初も「もうこれでいいべ!」って感じで。描かせたらウケるよなって。そんなノリなんです(笑)。

ーー今回、音の部分で意識したことは?

サイプレス上野:自分たちの好きな感じというか。普段の活動ではDJをやったりもしているので、自分がDJをやるなら、こういう曲をかけたいみたいな気持ちで作っていました。まあそれが自然に集まった感はありますけど。

ーー全曲さまざまな方がトラックを作っていますが、参加ミュージシャンについては?

サイプレス上野:例えば「Yokohama La La La」のDJ PMXさんとか、「青春の決着」のZOT on the WAVEとか、好きなトラックメイカーさんっていうとあれですけど、「なんかないっすかね」って聞いたらバンバン送ってくれたんで、そこから今の自分達の気持ちに合いそうなトラックを選ばせてもらったみたいな。他の方もそういう感じでやってて。Yasterizeの2曲、「ヒップホップ体操第三」と「ザ・グレート・カブキ」に関してだけは俺らのほうでイメージがあって、「こういう感じにしてほしい」とお願いして作ってもらいました。Yasterizeには前作何曲もやってもらってるんですけど、「ムチャブリの鬼」って呼ばれてます(笑)。

ーーそんなムチャを言うんですか?

サイプレス上野:絵を送って、汲み取ってもらったり(笑)。説明しても「何言ってるか分からないです」って言われるんですけどね。それでも「お前ならできるから」って。

ーー「ザ・グレート・カブキ」なんかは、メタルのミクスチャーロックみたいな。

サイプレス上野:そうそう(笑)。(ロベルト)吉野がやってる“刑鉄”というメタルユニットがあるんですけど、その延長線上の感じで。Yasterizeと「メタルトラップみたいなものをやりたい」って話をして作ったんです。それで、刑鉄でギターをやってるけいちゃん(高橋’JUDI’渓太)が、ギターを入れてくれたりして。

ーー「ザ・グレート・カブキ」は、プロレスラーの?

サイプレス上野:そうです。でも、そのカブキさんのことを歌ってるわけではなくて…“傾(かぶ)く”という言葉があって。

ーーああ、『花の慶次』みたいな?

サイプレス上野:そうそう。“かぶき者”です。浮世離れしてるって言うか、傾き続けないと生きていけないみたいな。そういうイメージで1曲作りたいって思ったんです。

ーー“格好をつける”みたいなことですよね。

サイプレス上野:格好つけと意思表示をこういうメタルみたいなトラックでやったら、面白いんじゃないかと思って。

ーーヒップホップをやること、ラップをやることって、傾くこととある種通じてますね。

サイプレス上野:まあ、俺とか吉野は、逆にけっこう私生活をさらけ出すタイプですけど(笑)。それでもステージ上では、演じるじゃないけど、傾くみたいな気持ちを持っていないとヤバイよなって思うし。ステージ上で面白く見えているのは、ハプニングももちろん面白いんですけど、すべて計算の上でのことっていうか。ちゃんと練習しているからこそ、面白くなるんですね。俺らでさえそうなんで、ストイックなヒップホップの人たちは、普段から格好から傾いてたりするし。

ーー傾き続けることは大変そうですけど。

サイプレス上野:まあそうですね。たとえば洋服で、俺は“柄オン柄”って呼んでますけど、柄ものの上に柄ものを合わせるのを昔からやってて。友だちからは「スゲエ格好だな」と笑われていたんだけど、10年くらい前に、『Ollie』っていう雑誌のストリートスナップに載ったことがあるんです。しかもDJ MUROさんの賞をゲットして、1ページ丸ごと俺だけで載ったんですよ。写真の下に「サイプレス上野さん(ラッパー)」って紹介されて。まず、ラッパーとして認められてねえ(笑)。でも、人から何を言われても傾いていれば、認めてくれる人は認めてくれるんだなって。

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