『BanG Dream!(バンドリ!)』インタビュー
Elements Garden 藤田淳平&都丸椋太が明かす、『バンドリ!』楽曲に込められた多彩なアイデア
『バンドリ!』楽曲の成り立ちと制作秘話
――Elements Gardenのみなさんとしては、『BanG Dream!』の楽曲を制作する際、最初にどんなことを意識されたんでしょうか?
藤田:最初はPoppin'Partyの「Yes! BanG_Dream!」があって、「STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜」など4~5曲を短期間で作ったんですが、まずは「実際に弾ける」ことを優先しよう、と。初期にアレンジを担当してくれた藤永(龍太郎)はギタリストなので、彼が実際に1本で再現可能なフレーズを用意しました。楽器を何本も重ねたり、途中で無理なキー変更をしたりするのではなくて、実際に5人で鳴らせる、ライブでの再現度が高い曲を作ろうということで。また、ライブでお客さんが一緒に盛り上がれる曲にしようとも考えていましたね。当時、メンバーはバンドをはじめたばかりで心細かったでしょうし、彼女たちにとって、お客さんの力はとても大きいと思ったんです。そこで、初期の楽曲は特に、お客さんに助けてもらう曲であるということも意識していました。
――「Yes! BanG_Dream!」もそうですが、『BanG Dream!』シリーズの楽曲は初期の頃からお客さんが合いの手を入れたり、一緒に盛り上がったりできる構成になっていましたね。
藤田:その辺りは相当意識したことですね。また、音源で演奏するミュージシャンやエンジニアを選ぶ際に「テクで行き過ぎないでくれ」ということも伝えました。たとえば、あの時点でいきなりドラムで6連のフィルインを入れられても、ライブで演奏するときにそれがプレッシャーになるといけないと思ったんです。
――それがリアルライブを通して伝えたい、「バンドってこんなに楽しいんだよ」という雰囲気を妨げてしまうことになるかもしれない、と。
藤田:そう、一番大事なのは、彼女たちが可愛く、そして「楽しく」演奏してくれること。今はもう、自分から色々と表現してくださっているので、まったく心配はないですよね。
――一方、都丸さんは、『ガルパ』でのカバー曲のアレンジを中心に担当されています。『BanG Dream!』シリーズの人気を広げる意味では、カバー曲も大きな役割を果たしてきたと思うのですが、カバー曲のアレンジではどんな工夫をしているのでしょうか?
都丸:カバーのアレンジでも、「5人で演奏する」ことを意識していて、各メンバーのパートを具体的に用意しているんです。中には原曲がバンドサウンドではないものもあるし、ギターとドラム、ベースだけで成り立っているものもあるので、原曲にはない楽器を足すときに、もともとの世界観を壊さずに、同時にバンドのグルーブが感じられるようにする工夫は色々と考えました。どの曲も試行錯誤を重ねていますけど、たとえばRoseliaの「魂のルフラン」は、最初に彼女たちが歌う曲で、まだリハーサルスタジオに入る前にアレンジを考えていた曲で。
藤田:しかもこの曲は、もともと演奏するのが難しい曲なんですよ。それをまだ誰も聴いたことがないRoseliaが演奏するときに、どうすれば合うのかと考えていく作業でした。
都丸:そのために、何度もアレンジを考え直しましたね。
――Roseliaのカバー曲では、原曲を上松さんが担当されていた水樹奈々さんの「ETERNAL BLAZE」もありました。
都丸:そうですね。僕としてはそういう意味でのプレッシャーも感じつつ……(笑)。どうすれば「Roseliaの色になるか」を考えました。そこで、弦のフレーズをあえてシンセで表現したり、ドラムのビートを一部変えたりしています。カバー曲では、ひとつのフレーズを担当する楽器や音色などでも、それぞれのバンドらしさを表現しているんです。
――『BanG Dream!』シリーズのバンドは、音楽的にもそれぞれ個性が異なっていると思いますが、この個性の振り分けについては、どんな風に考えていかれたんですか?
藤田:Poppin'Partyは、『ガルパ』がはじまる前から活動していたので、彼女たちの色は「ポップな王道のガールズバンド」ということがはっきりしていて。でも、そこから『ガルパ』で「5バンドに増えます」と聞いたとき、最初は「でも、全部バンドなんですよね……?」と思っていました(笑)。バンドで出せる音のバリエーションはある程度決まっているので、その中での差別化はなかなか難しい。そこで、各バンドの楽曲を担当する作家やミュージシャン、エンジニアをある程度分けて、チームとして何曲か作っていくことにしました。つまり、バンドごとに違うカルチャーが存在するような制作環境にしたんです。また、そのとき大事にしたのは、それぞれのバンドが「何かに影響を受けてこの音になっている」という、それぞれの「ルーツ」や音楽的な必然性を大事にすることでした。だからこそカバー曲もこういう音になる、というある程度の色付けを行なっていきました。
――なるほど。それぞれどんなルーツを想定されていたんでしょうか?
藤田:あくまでも楽曲制作を進めていく上で、技術的な共通意識を持つための表現ですので、実際のキャラクターの設定とは関連が無いことを前置きさせてください。たとえばAfterglowだと、テクニカルにもいけるロックバンドで、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTにキーボードがいるような雰囲気をイメージしていました。Roseliaよりもパンキッシュで、ラフな雰囲気がある方向性ですね。その激しさを、ダークでファンタジックな方向に振っていったのがRoseliaのイメージでした。一方で、Pastel*Palettesの場合は、「バンドに縛られすぎない」のがテーマでした。彼女たちはアイドルでもあるので、打ち込みでの魅せ方なども工夫して、アイドル曲としての魅力も考えつつ、そのうえで彼女たちの声が映えるものに仕上げていきました。
――Pastel*Palettesで言うと、藤田さんが作編曲を担当された「SURVIVOR ねばーぎぶあっぷ!」などにも、まさにその雰囲気を感じますね。
藤田:そうですね。イメージとしては、つんく♂さんが手掛けるモーニング娘。の楽曲のような雰囲気を想定していたんです。生ドラムを使った曲も多くて、曲ごとに必ず核となるルーツがありますよね。「LOVEマシーン」だと70年代ディスコですし、「ハッピーサマーウェディング」だとラテンのノリがしっかりと入っている。そういう「バンド+何か」というアプローチで、彼女たちの声を聴かせる雰囲気を考えました。そしてハロー、ハッピーワールド!は、僕は2010年代型のバンドだと捉えていて、バンド形式で色々な面白味を消化している人たちをイメージしました。今のバンドって演奏も上手いですし、色んな要素が入っていますよね。そういう人たちが奏でそうな音の雰囲気を新たに考えていったんです。
――お2人がそれぞれ手掛けられた楽曲の中で、特に思い入れの強い曲はありますか?
都丸:僕は作編曲を担当させてもらったAfterglow の「COMIC PANIC!!!」ですね。この曲は『ガルパ』でのシナリオがコミカルだったので、それをどう音楽的に表現するかを考えて、シャッフルビートを加えていきました。Afterglowは8ビートが中心で、中には16ビートの楽曲もありますが、そこにもう一種類違うビートを加えてもいいのかな、と思ったんです。思い切ってセリフをド頭に入れたことも含めて、今までにないチャレンジをした楽曲でした。あと、Afterglowのカバー曲としてアレンジした「アスノヨゾラ哨戒班」は、そのアレンジでニコニコ動画に「歌ってみた」動画が投稿されることになって。僕は小さい頃からニコニコ動画を観てきた世代なので、感動しましたね。
――藤田さんはいかがでしょう?
藤田:全曲思い入れがあって選ぶのは難しいんですけど、12月12日にリリースされるRAISE A SUILENの1stシングル『R・I・O・T』のカップリング曲「UNSTOPPABLE」は僕が作曲していて、表題曲と共に音楽性のディレクションも担当させてもらいました。「THE THIRD(仮)」と呼ばれていた彼女たちの「3番目のバンドの魅力」を表現する立ち上げの曲だったので、ここは色々と考えました。最初は「デジタル+バンド」というキーワードがあって、制作陣もプロデューサー陣もそれを共有していたんですが、人によってデジタルの定義が全然違うんですよ(笑)。一方では、SkrillexのようなエモいEDMにしたいという話もありつつ、同時に、メロディが映えるように小室哲哉さんや浅倉大介さんのようなサウンドにしたいという意見もあって――。
――国も時代も違う「デジタル」を色んな方が想定していたんですね(笑)。
藤田:はい。「でも、何故かみんなが分かり合っている」という不思議な状況で(笑)。そこで、アレンジを担当した菊田(大介)と一緒にJ-POP的な、日本的なメロディを大切にしつつ、そこにエッセンスとしてEDMやデジタルの要素を取り入れていきました。