『petit milady オーケストラコンサート~Happy Halloween!観に来てくれたらイタズラするぞ~』

petit miladyの音楽は“新たな一面”を手に入れた 初のオーケストラコンサートを見て

 本編も中盤に差し掛かり、このコンサートの目指したところが、段々と鮮明になってきた。そのひとつには、これまで発表してきた楽曲に、新たな楽しみ方を創出する意図があったのかもしれない。だからこそ、この日はオーケストラを招いたのだろう。通常のカラオケ音源やバンド演奏では、どうしてもカバーしうるサウンドの範囲は限られる。しかし、弦楽器や金管楽器をはじめ、使用できる楽器の選択肢を広げることで、様々な楽曲に備わる意外な一面に気づくことができた。

 あわせて、この日は全楽曲とも、原曲とは異なる穏やかなアレンジを施されたほか、そこで表現された各楽曲の世界観は、むしろ普段より明確にさえ感じられた。実際に、ピアノとバイオリンによる「azurite」から、バンド編成での「YAYAKOSHI GIRL」まで、多種多様な楽器を最適に使い分けられたことで、歌詞に込められたメッセージも掴みやすかったように感じる。多くのファンが終演後に「普段よりも歌のメッセージがすんなり伝わってきた」と口にしていたのも、おそらくはそのためだろう。また、今回はダンスを披露しないことで、良い意味で視覚的な制約があったことも、その一助になったと思われる。

 そして何より、そのようなステージを実現できた背景には、悠木と竹達が声優/シンガーとして卓越した技量を持っているからだろう。全楽曲がリアレンジされることで、新たな進行パターンを覚えるのはもちろん、曲調の穏やかさによって、二人の歌声にも注目が集まらざるを得ない。しかし、彼女たちは声優アーティストとして様々な歌声を使い分けることで、この難しい課題を乗り越えた。

 なかでも「箱庭のヒーロー」では、二人の歌声を通じて、それぞれの演技における特徴も確認できた。同楽曲において、悠木は激しい身振りを交えるなど、主人公になりきる“憑依型”、一方の竹達は悠木をサポートしつつ、自身の聴かせどころは外さない“俯瞰型”の声優/シンガーという印象を抱いた。互いに異なるアプローチを見せつつも、それがハーモニーのようにマッチすることで、結果としてこれまでの楽曲に新たな楽しみ方が与えられたのだ。これには、披露された楽曲たちも大いに喜んだに違いない。

 それぞれのソロ楽曲も歌い終えたところで、本編も終盤に。ラストナンバーは、2018年の声優楽曲界に誕生したマスターピース「360°星のオーケストラ」。プロデュースをhisakuni(SUPALOVE)が担当した同楽曲では、Bメロからサビへのブリッジで鳴る鉄琴の音色が、星の光瞬く様子を鮮やかに再現しているようだった。

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