矢野顕子とYUKIが語り合った、「バナナが好き」誕生秘話と音楽に向かう姿勢
YUKIがパーソナリティを務めるラジオ番組『YUKI HELLO!NEW WORLD』(毎週日曜日15時30分〜15時55分/TOKYO FMはじめとする全国38局ネット)の10月21日、10月28日、11月4日放送回に矢野顕子がゲスト出演した。
矢野顕子は、ニューアルバム『ふたりぼっちで行こう』(11月28日発売)収録の矢野顕子&YUKI名義の新曲「バナナが好き」でYUKIと共作・共演を果たした。アルバムには、YUKI以外にも奥田民生、前川清、細美武士、Reed and Carolineとの新曲が収録されており、上妻宏光、U-zhaan× 環 ROY× 鎮座 DOPENESSとは矢野楽曲のセルフカバー、平井堅とはチャップリンの名曲「Smile」のカバー、鹿の一族、大貫妙子、吉井和哉とはゲストアーティストに関連する楽曲のカバーに挑戦している。
今回の3回の放送では、出会って12年が経つというYUKIと矢野顕子の親密さが感じられるリラックスしたトークや「バナナが好き」の誕生にまつわるエピソードを楽しむことができたのはもちろん、なにげない会話の端々に歌手/表現者としての矢野顕子の心得が滲む貴重なオンエアとなった。
まず、10月21日の放送では「バナナが好き」の制作の様子が明らかに。同曲は、2016年に行われた矢野顕子のソロデビュー40周年記念企画ライブ『ふたりでジャンボリー』にYUKIがゲスト出演することを機に制作、ライブで初披露された。楽曲を制作することが決まると、YUKIが普段はある曲に対して詞をつけるスタイルであると聞いた矢野が、矢野の詞にYUKIが曲をつける制作方法を提案したのだという。その理由について尋ねられた矢野は「やったことないのをやるって楽しいじゃん?」と回答。YUKIは初めての“詞先”に戸惑いつつも、「すごい矢野さんに信頼されてるんだって思ったの」と、不慣れでもセンスを信じて作曲を託してくれたことが嬉しかったと語った。
矢野の「やったことのないもの」への好奇心は、幼少期の頃からあるものなのだという。「迷子になるのが好き。知らない道を行くのってドキドキワクワクするじゃない」「でも迷子になりながらも道をおぼえたりするの」といった発言からは、ついその言葉以上の意味を見出してしまう。本能のまま進んでいけば、その先には必ず何か新しい発見があるーーそれはまさに今回のYUKIとのコラボレーション、さらには多くのゲストミュージシャンを招いて制作された『ふたりぼっちで行こう』にも通じるスタンスである。
ニューヨーク在住の矢野と東京在住のYUKIの制作は、Skypeでコミュニケーションを取りながら進められていった。簡単な打ち合わせの後に矢野からさっそく送られてきたという「バナナが好き」。矢野が「バナナが好きだから」という驚くほどストレートな理由で生まれた詞だ。YUKIは〈こどもたちにバナナ/さるの子にもバナナ〉に〈一人の朝にもバナナ〉と続くところに「矢野さんの歌詞の好きなところが出ている」と熱弁。「これはいいメロディをつけたい」と一層作曲にも力が入ったことを明かした。そんなYUKIが満を持して送ったメロディを初めて聞いた矢野の感想が「バナナがとてもおいしそうな曲ね」だったというのも、矢野の感覚的かつおおらかな人柄を表すエピソードだ。長年矢野の楽曲に親しみ憧れていたYUKIにとってその一言は、「いい曲」と伝えられる以上の喜びを感じるものだったことだろう。ちなみに、その詞を受け取ったYUKIも実は大のバナナ好きだったという偶然には、今回のコラボレーションの必然性を感じざるを得ない。
また、同曲は矢野のピアノとYUKIのドラム演奏に二人のボーカルデュエットが乗せられたのみのシンプルな編成だ。YUKIのドラムはガールズロックバンド・Mean MachineとしてCharaとツインドラムを担当していたことを覚えていた矢野からのアイデアだった。レコーディングの際、もっと音が加わると思っていたというYUKIだが、矢野は「シンプルが一番いいんじゃないですかね」ときっぱり。その潔さにYUKIも「勉強になります」と感慨深く応じた。なお、「バナナが好き」は10月24日から各種音楽配信サイトにて配信中。全国のタワーレコードおよびタワーレコード オンラインでは、矢野とYUKI監修の楽曲DLコード付きオリジナルバナナケースの販売も行われている(矢野曰く「ダウンロードする新鮮さを保つため」のケースでもあるとのこと)。