嵐、2018年シングル曲に共通するテーマが示すもの 荻原梓『君のうた』評
『「untitled」』以降の嵐
『THE DIGITALIAN』『Japonism』『Are You Happy?』とここ数年続けてコンセプチュアルなアルバムを世に放った嵐。それに対して昨年の『「untitled」』はアルバムの全体像こそ歪であったものの、作品が最終的に到達する風景はこれまでの軌跡、グループの未来、ファンへの感謝といったテーマだった。「Find the Answer」、「夏疾風」といった直近のシングル曲も基本的にはそうした要素をベースとしながらポップソングへと昇華している感がある。今作においても、〈ありふれた日常〉や〈見慣れた小径〉といった日常を切り取った歌詞に、温かく爽快感のあるサウンドがマッチして優しさに溢れた楽曲となっている。そこに「君のうた」とタイトリングしているのも面白い。
デビュー20周年を間もなく迎えようとしている彼らが置かれている境地というのは、なかなか他人には想像しにくいものだ。初回盤のDVDに目を通すと、リーダーの大野が「(嵐について)20代の頃は仕事仲間的な要素もあった」としつつ「(今は)別な空間」と感じているという。「家族でもないし、仕事仲間でもない。もうひとつ自分の中で枠が出来ている感じ」と話している。現在の嵐というグループは、彼らにとってはもはや家族以上の特別な存在となっているのだろう。
長らく嵐楽曲からは離れていた多田慎也がパワーアップしてまた製作陣に加わっている(今作のメロディは本当に自然で美しいと思う)点からも、今の嵐は『「untitled」』から強固に続くストーリーが存在しているように見える。大きな節目を目前に控えた今、彼らがどのような心境でいて、それをどう作品で表すのか。今の嵐の作品から感じるのは、グループのそうしたリアルな姿である。
■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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