ROTTENGRAFFTY、日本武道館で示したバンドの矜持と新たな始まり 『PLAY』ツアー最終公演

 今でこそ、ROTTENGRAFFTYはロックシーンで確固たる存在感を示し、ついには日本武道館のステージを踏むバンドになったが、決してこれまでの道のりは平坦ではなかった。2003年にメジャー進出するものの、シングル2枚、フルアルバム2枚を発表した後に契約を解消。2006年以降もライブ活動のペースが衰えることはなかったが、作品としては2010年の3rdフルアルバム『This World』までの間、シングル1枚を発表するに留まり、もがき悩んだ時期でもあった。その後の活躍っぷりは語るまでもないであろうが、言ってしまえば、一度は夢破れたバンドが歯を食いしばって挑み続けた結果がこの日本武道館。

 加えて、彼らは自らの音楽を届けることへのアプローチにためらいがない。ロックバンドとして大切にする意地はもちろんあるが、妙なプライドで可能性を閉ざすようなことはせず、広く打って出る気持ちをいつも携えている。だからこそ、ひとつの象徴でもある日本武道館のステージは辿り着くべき場所であり、ここ数年のバンドとしての目標でもあったのだ。

 そういった背景を感じ取った人も多かったのであろう。10月3日、『PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018 in 日本武道館』と題された本公演はフルアルバムとしては約4年半ぶりとなった『PLAY』を引っさげてのツアーファイナルかつ来年に迎える結成20周年へ向けて改めてスタートを切るライブではあるが、そこだけに留まらず、たくさんの夢を重ねたファンや仲間が集まった。会場にはツアー先でそれぞれ発売したその地区の市外局番がバックプリントされたツアーTシャツに身にまとった姿も多く、長年の間、ずっとしのぎを削り合ってきた盟友と呼ぶべきバンドたちも大集結。皆々がその物語の一員となるべく、ここ日本武道館へ駆けつけていた。

 会場はスタート前から祝福ムードに包まれ、HIROSHI(Dr)、侑威地(Ba)、KAZUOMI(Gt)、N∀OKI(Vo)、NOBUYA(Vo)と順にステージへ姿を表した際も集まったオーディエンスへ感謝の意の示し、そういった空気感で始まるかと思いきや、そこに寄りかかることなく、N∀OKIの大きな咆哮からたぎりまくった想いを吐き出す怒涛の幕開け。一音一音にしっかり重みを持たせ、『PLAY』からヒリつく緊迫感がたまらない「寂寞 -sekibaku-」と盟友たちのキーワードを散りばめた「PLAYBACK」を矢継ぎ早に投下し、いつものようにやろうぜと言わんばかりにKAZUOMIは強く客席へ手を突き出して気持ちをつなげようとする。奇をてらうことなく、普段通りの真っ向勝負。オーディエンスとの信頼があるからこその煽り、呼びかけや問いかけを続け、オーディエンスも呼応し、激しいモッシュやダイブが巻き起こる。普段と変わらぬスタイルでこの大きな会場を一体としていくのだ。

 序盤からこれでもかと攻め倒し、『PLAY』の収録曲を中心としながらも、「夕映え雨アガレ」や「毒学PO.P革新犯」といったずっと追いかけてきたファンにはたまらないナンバーも披露。様々な曲が入り乱れながらもこの淀みない流れは、結成から19年、一貫してオリジナルメンバーのまま、鉄壁の布陣で突き進んできたからこそ。自分たちをいつ知ったのかなんて関係なく、N∀OKIが「集まった人すべてに、ここからまたさらに加速、始まりを始めよう!」と叫んで放った「So...Start」、NOBUYAが「オレらと凄いところまでいこうぜ! 全員かかってこい!」と大声を上げ、曲中にはKAZUOMIがギターを置いてステージ端まで駆け出したぐらいの盛り上がりとなった「THIS WORLD」も素晴らしかった。

 これまでの道のりを振り返りながら、N∀OKIが「よう不器用って言われるけど、それの何が悪いねんって思ってたし。それはちゃうやろ、って思うモノは首を縦に振らんかったし。まあ、それでエラい遠回りしたけど、オレら今、ROTTENGRAFFTY史上、いちばんアガってます!」と宣言してから始まった中盤もテンションが一瞬たりとも落ちるときがなく、会場中が惹きつけられっぱなしの展開。「この一瞬! この一瞬をもう一度!」というN∀OKIの言葉から始まった「Just One More...」は強く胸を打ち、大型スクリーンでとにかく想いをその場でぶちまけるメンバーの表情がクローズアップされた「「70cm四方の窓辺」」は心を激しく揺さぶってくる。

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